第501章 負傷

遠藤音美は既に馬を選んでいたが、突然鈴木月瑠が馬に乗っているのを見た。その馬は大人しく立っており、月瑠が撫でるのを楽しんでいるようだった。

彼女の表情は一瞬にして暗くなり、目には信じられない色が浮かんだ。

その汗血馬は松本旻の宝物で、松本旻自身も手こずったことがあるのに、鈴木月瑠がどうしてこんなに従順な馬にできたのか?

遠藤音美はこの光景に心が乱れ、まぶたが垂れ下がり、少し疲れた様子を見せた。

松本旻は彼女を見つめた。

遠藤音美はようやく我に返り、馬に跨り、手綱を引き締め、両脚で馬の腹を挟み、馬を鈴木月瑠の側まで進ませた。

彼女は目を細めて言った。「難しい技は競わないわ。馬場を五周して障害物を越え、最初の地点に戻るだけ。先に戻った方が勝ちよ。」

「どうでもいいわ」鈴木月瑠は無関心そうに、眉間に冷たさを宿し、その気迫は収まる気配がなかった。

その馬は月瑠の身に漂う殺気を感じたのか、不安げに前脚を動かした。

一橋貴明たちの表情が曇った。

遠藤音美は赤い唇を歪め、月瑠を横目で見て、軽蔑するように、そしてスタッフに向かって言った。「私たち、準備できました。」

スタッフは頷き、号砲を鳴らした。

銃声が響き、二人は同時に馬を走らせてコースに飛び出した。

池田りつきと池田念々は立ち止まり、池田ふうたの側に歩み寄った。

鈴木月瑠と遠藤音美の速度は共に速く、二人とも馬術の姿勢は特に正確だった。

秋風が吹き抜け、二頭の馬の姿は凛々しく、最初の二周は互いに追い抜くことなく、速度は速く、安定していた。

松本旻は寄りかかりながら、だらしない態度で中村少華を見て、口を開いた。「これじゃ、本当に誰が勝つか分からないな。」

「あなたの注目点は、七兄さんに向けるべきだと思うけど。」中村少華は眉を上げてため息をつき、目尻で一橋貴明の手にある銃を見た。

それを聞いて、松本旻は口角を引きつらせた。「……」

「月瑠姉が無事なら良いんだ。彼女の手が心配だよ。」池田滝は月瑠の姿を見つめ、唇を固く結んだ。

その言葉を聞いて、一橋貴明の周りの空気はさらに重くなった。

数人は横に少し移動し、特に池田滝は尻を引き締めた。

池田ふうたはゆっくりと言った。「これで負けたら、鈴木月瑠は六億円失うことになるな。」