遠藤音美は既に馬を選んでいたが、突然鈴木月瑠が馬に乗っているのを見た。その馬は大人しく立っており、月瑠が撫でるのを楽しんでいるようだった。
彼女の表情は一瞬にして暗くなり、目には信じられない色が浮かんだ。
その汗血馬は松本旻の宝物で、松本旻自身も手こずったことがあるのに、鈴木月瑠がどうしてこんなに従順な馬にできたのか?
遠藤音美はこの光景に心が乱れ、まぶたが垂れ下がり、少し疲れた様子を見せた。
松本旻は彼女を見つめた。
遠藤音美はようやく我に返り、馬に跨り、手綱を引き締め、両脚で馬の腹を挟み、馬を鈴木月瑠の側まで進ませた。
彼女は目を細めて言った。「難しい技は競わないわ。馬場を五周して障害物を越え、最初の地点に戻るだけ。先に戻った方が勝ちよ。」
「どうでもいいわ」鈴木月瑠は無関心そうに、眉間に冷たさを宿し、その気迫は収まる気配がなかった。