しかし鈴木月瑠は立ち止まったまま、手のひらを開いて見た。
手のひらは血まみれだったが、見た目ほど怖くはなく、以前の傷が擦れて開いただけだった。
「心配しないで、前の傷が擦れただけよ」鈴木月瑠は一橋貴明を見て説明した。
一橋貴明は彼女の手首を握り、顎の線が引き締まって、保健室の方へ連れて行った。「じゃあ、薬を塗りに行こう」
鈴木月瑠は再び彼を見上げて:「うん」
必死に説得していた池田滝:「……」
私が行こうと言っても行かないのに、他人が言うと行くのね!
そして馬の蹄から逃れた遠藤音美は、今でも気分が良くなかった。恐怖が心の底からまだ完全に消えていなかった。
さっきの一瞬は、まるで悪魔に喉を掴まれたかのようだった。
とても恐ろしかった。
遠藤音美の肘が骨折し、激痛が走り、顔にも痛みが襲ってきて、少し湿った感じがあった。