小春哲が招待所に戻ると、すぐにポケットから紙を取り出して広げた。
証明は最初はとても簡単で分かりやすかったが、後半になるにつれて難しくなっていった。
この背理法は、小春哲の知識の範囲を超えていた。
小春哲はデルタ数学研究所の人間で、もちろんバッハの証明に触れたことはあったが、この紙に書かれている内容は、その手順とは全く異なっていた。
言い換えれば、これは書き手が独自に考案した証明方法だった。
証明過程の横には枠組み構造が描かれており、小春哲はその枠組みを見ながら、思考が自然とその構造図に沿って進んでいった。
枠組み構造図を全て見終わると、彼の頭の中にあったバッハ予想に関する断片的な知識が、一枚の蜘蛛の巣のように繋がっていった。
完全な証明体系が形成された。
彼の頭の中で詰まっていた部分の思考が、一気に通じた。