「まだ分からないの?一橋家の若旦那が勝ったのよ。二人はうまくいってるわ」鈴木太夫人は落ち着いた様子で口を開いた。
白石思曼から鈴木月瑠の一橋貴明に対する態度の変化を聞いて、彼女は理解していた。
鈴木剛士は冷水を浴びせられたように「……」
一橋貴明と付き合うのは、良い選択とは言えない。
それに……
「この前うちで宴会を開いた時、一橋貴明の父親が縁談を持ちかけてきたのを断ったのに、今また縁談って、私が恥ずかしくないか」
鈴木剛士は憂鬱な表情で、一度言った言葉は水をこぼすようなもので、それを取り戻すのは面目が立たないと思った。
「どうせあなたが断ったのよ、私じゃないわ」
鈴木太夫人は老眼鏡を直しながら、考えを整理した。「この縁談は私もあなたのお父さんも弟も賛成よ。一橋家はお金持ちだし、月瑠には相応しいわ」