鈴木月瑠は鳳古平がここにいるのを見て、もはやここにいたくなくなり、松本旻が作った小さなグループチャットにメッセージを送って、退散しようとした。
静墨は口を尖らせた。彼女はあの王冠のためだけに来たのだ。
今や王冠は鳳古平に競り落とされ、彼女にはもう留まる気分もなかった。
二人は無表情で立ち去ろうとした。
そのとき、ステージ上で司会者の興奮した声が響いた。「今夜の最後の競売品は、著名な絵師の蘭による絵画『終末の日』です。」
「開始価格は、八百万です。」
聞き覚えのある名前を聞いて、鈴木月瑠は足を止め、展示台の方を見やった。
静墨は鈴木月瑠が興味を示したのを見て、同じく足を止めた。
下では大勢が値段を競り始めた。
「千万!」
「千百万!」
「千二百五十万!」
「千五百万……」