鈴木月瑠は鳳古平がここにいるのを見て、もはやここにいたくなくなり、松本旻が作った小さなグループチャットにメッセージを送って、退散しようとした。
静墨は口を尖らせた。彼女はあの王冠のためだけに来たのだ。
今や王冠は鳳古平に競り落とされ、彼女にはもう留まる気分もなかった。
二人は無表情で立ち去ろうとした。
そのとき、ステージ上で司会者の興奮した声が響いた。「今夜の最後の競売品は、著名な絵師の蘭による絵画『終末の日』です。」
「開始価格は、八百万です。」
聞き覚えのある名前を聞いて、鈴木月瑠は足を止め、展示台の方を見やった。
静墨は鈴木月瑠が興味を示したのを見て、同じく足を止めた。
下では大勢が値段を競り始めた。
「千万!」
「千百万!」
「千二百五十万!」
「千五百万……」
ロシアの油絵は世界芸術の宝庫における輝かしい宝玉であり、油絵は世界美術史を貫いている。そして、天才絵師の蘭は美術界における異彩を放つ存在だった。
そのため、オークションの多くの人々がこの絵のために来ていた。松本旻たちも含めて。
小春楓も鳳古平に報告していた。「若君、今夜は多くの方がこの絵のために来ています。向かいの個室にいる方々は七姫と仲が良く、彼らが先ほど手を出さなかったのも、おそらくこの絵のためでしょう。」
鳳古平は表情を変えず、無関心そうに言った。「私もこの絵は絶対に手に入れたい。帝都のこれらの家族が、霊族と財力を競うなど、おこがましい。」
「若君は彼らに先に争わせるおつもりですか?」小春楓は恭しく尋ねた。
「ああ。」
鳳古平は片手で顎を支え、優雅な姿勢を保っていた。
先ほどのギリシャの王冠の時と同じように、最後の一人が残るまで待って、それから手を出すつもりだった。彼には十分な資金があった。
池田ふうたと松本旻が競り始め、二人は交互に値段を上げていった。
「二千万!」
「二千百万!」
松本旻が自分より高い値段を付けたのを聞いて、池田ふうたは口角を上げた。「松本君、君子は人の好むものを奪わないとは言うが、この絵は譲れないよ。」
「俺もこの絵は絶対に手に入れたい。実力勝負だ。」松本旻の母も蘭の絵画を非常に好んでいた。彼が大金を投じるのは、母親を喜ばせるためだった。