鈴木月瑠は瞳を伏せながら、一橋貴明を見る時、微妙な眼差しを向けた。「私の目は確かだから、並の人には目もくれないわ」
一橋貴明は薄い唇を緩めた。「つまり、僕だけが目に留まるということ?」
かなり自信満々だ。
鈴木月瑠は笑いながら、一橋貴明に近づいた。
その整った魅力的な顔立ちが、すぐ目の前に迫り、紅い唇が間近に見えた。
一橋貴明は思わず目を閉じた。
呼吸の中に、少女の芳しい香りが漂い、まるで柔らかな雲の上にいるかのようだった。
彼は丸五秒待ったが、薄い唇にその柔らかさは触れなかった。
一橋貴明は眉をひそめ、鈴木月瑠を見つめ、瞳には複雑な感情が宿っていた。
鈴木月瑠はすでに姿勢を正して座り、スプーンでプチケーキを食べていた。さっきの彼の様子には気付いていないようだった。