第644章 私は彼女に興味がない

副會長は眉を上げて見た。

相変わらず雲書だ。

この作品も悪くはないが、あの人の梅花小楷と比べると、まだまだ及ばない。色はあるが魂がない。

「Aですね」副會長はすぐにAランクの印を押した。

それを聞いた遠藤音美の顔色が一瞬悪くなり、かすかに青ざめ、目の前のAランクの印を見て、その場で呆然と立ち尽くした。

A……

どうしてまだAなの……

遠藤音美がそこに立ち尽くすのを見て、副會長は習慣的に慰めの言葉を掛けた:「遠藤音美さん、落ち込む必要はありません。まだまだ伸びる余地はありますよ。」

遠藤音美は奥歯を噛みしめ、目に怨みと悔しさを浮かべた:「私はそんなに下手なんですか?」

副會長は説明した:「以前なら、Sランクを取れたでしょう。しかし今回は梅花小楷の作品があって、特に素晴らしかった。帝都の方のものです。」

「名前は?」遠藤音美の声がかすかに震え、両手を握りしめた。

副會長は首を振った:「正確な名前は私にもわかりません。その作品の署名には『鈴』という一文字だけでした。」

鈴?

鈴木月瑠?

遠藤音美は信じられない様子で目を見開き、頭の中が混乱した。

彼女は顔色の悪いまま教室を出て、出口に向かって歩き始めた。しかしVIP休憩室を通りかかると、中から興奮した声が聞こえてきた。

遠藤音美の唇は白くなるほど固く結ばれていた。

副會長山中聡の弟子である彼女がSランクを取れなかったことは、本当に恥ずかしいことだった。

そう考えていると、突然ドアが開き、清水秋が最初に出てきた。顔中しわになるのも気にせず、向日葵のように笑顔を浮かべていた。

遠藤音美は急いで口を開いた:「副會長、私は……」

自己紹介さえ言い終わらないうちに、遠藤音美の瞳孔が急激に縮んだ。

中からカジュアルな服装をした、しかし特別なオーラを放つ人物が現れた。

鈴木月瑠……

鈴木月瑠だわ……

遠藤音美の言葉は喉に詰まり、こめかみが痛くなるのを感じた。

「遠藤音美さん、何かご用でしょうか?」

清水秋は当然遠藤音美を知っていたが、さっきまで満面の笑みだった彼の表情は、今は淡々としていた。

遠藤音美の頭の中は鈴木月瑠のあの嫌な顔でいっぱいで、激しく唾を飲み込んだ。

何か言おうとした時、鈴木月瑠が口角を上げ、無関心そうに言った:「とりあえず、大会には私が出場します。」