第653話 遅刻

「今は午後二時だ。二時間後に終了して、その後は他の項目に移る」中村少華は腕時計を見ながら、大きな声で言った。

号令一下、全員が地面に伏せ、姿勢は特に標準的だった。

しかし、銃口の前に重いレンガが縛り付けられているため、前端が下がってしまう。肩で支え、腕の力を安定させて、銃のバランスを保つ必要があった。

わずか五分が経過したとき、パンという音が聞こえた。

誰かがレンガを落としたのだ。中村少華はその女性を一瞥し、冷たい口調で言った。「あと九回の落下機会が残っている」

その女性は慌てて銃を持ち直し、汗が顎を伝って流れ落ちたが、拭うことすらできなかった。

手首が死ぬほど痛くても、彼女は手を緩めようとしなかった。

一橋貴明は傍らで顎を支えながら、落ち着き払って様子を見ていた。視線は鈴木月瑠から離れることはなかった。