第578章 私はあなたを助けられない

鈴木月瑠は眉目に反抗的な様子を宿し、口角を上げながら言った。「今度、彼に食事を奢ってもらいましょう」

「それもいいね」

斉田千広は鈴木月瑠を何度か見つめ、にこやかに言った。「何年も会わなかったけど、こんなに綺麗に成長したんだね。ほとんど見分けがつかないくらいだよ」

「うん、あなたもかっこいいわ」鈴木月瑠はゆっくりと頷き、口を押さえて欠伸をした。その優美な眉目が上がった。

そう言いながら、彼女は斉田千広の顔色を見て、口角を少し引き締めた。「あなた、体調もあまり良くないみたいね」

「僕の体はずっとこんな感じだよ」斉田千広は眉を上げ、気にしていない様子だった。

鈴木月瑠は彼の顔を見つめ、意味深な口調で言った。「しばらく休養を取ったほうがいいわ。数ヶ月休んで、全身検査を受けてみて」

斉田千広は一瞬驚いたが、すぐに頷いた。「わかった」

鈴木月瑠の医術が優れていることを知っていたので、斉田千広は彼女が何を見抜いたのか聞かなかった。体に何か問題があることは確かだと理解していた。

鈴木月瑠は習慣的に薬瓶を持ち歩いており、数本の瓶を取り出して斉田千広に渡した。「私が新しく開発したものよ。飴みたいに食べてもいいわ」

「ありがとう」斉田千広は遠慮せずに受け取り、ポケットにしまった。

傍らにいた遠藤音美は顔色が暗く沈み、長い間何も言えず、喉に何かが詰まったようだった。

本来は彼女が斉田千広と食事の約束をしたのに、彼は鈴木月瑠を見るや否や、彼女のことを完全に無視してしまった！

斉田千広は温和な容貌で気品のある雰囲気を持っていたが、骨の髄まで誇り高い人物だった。

彼は人との付き合い方が常に適切だったが、本当に親しく付き合える人は少なかった。

遠藤音美は斉田千広とそれなりに親しい間柄だった。

しかし、斉田千広の彼女に対する態度と鈴木月瑠に対する態度は、明らかに違っていた。

彼の話によると、鈴木月瑠は数年前から斉田勝たちを知っていたようだ。

でも数年前、鈴木月瑠はまだ田舎にいたはずなのに、どうやって斉田勝一家と知り合ったのだろう？

しかも斉田勝を説得して、喜んで彼女を宗主にさせるなんて？

そう考えると、遠藤音美はますます腹が立ち、胸の中に怒りが溜まっていった。