鈴木月瑠は唇の端を引き上げ、言った。「ちょうどいいわ。中村楽は中村古族の嫡女かもしれないから、この件について調べてもらえないかしら」
そして、中村楽の魂の交換の件について、巫啓に説明した。
「中村家の嫡系は確かに魂の交換の異能を継承できますが、全ての嫡系がそうというわけではありません」
巫啓は少し考えてから口を開いた。「中村家には行方不明になった嫡長女がいて、対外的には亡くなったとされています。現在の中村の嫡女は中村保美です」
「それなら、中村楽が中村の嫡女であることは間違いないわね」
「巫族の分家である以上、これは巫族の家庭内の問題でもあります。私が中村家の動きを見張っておきましょう」
彼は巫族若旦那の立場で中村古族に警告を発すれば、向こうも暫くは大人しくなるはずだった。
鈴木月瑠はうんと頷き、それ以上は何も言わなかった。
巫啓は目を上げて鈴木月瑠を見つめ、続けた。「父上と母上はあなたのことを知っていますが、長老会にあなたの現在の身分を知られたくないため、連絡を控えていたのです」
「彼らはあなたが宿命論に縛られることを望んでいません。だから、彼らを責めないでください。彼らはあなたを愛しているのです」
誰が自分の娘を愛していない男と結婚させたいと思うだろうか。巫族の族長であっても、私心はあるものだ。
「わかっています」
鈴木月瑠は目を伏せた。「巫霊は私のところにいます。彼女の身体機能はもうすぐ回復するでしょう。目覚めたらあなたに連絡します」
一度も会ったことのないこの両親に対して、彼女は言い表せない感情を抱いていた。
彼女は研究施設で育ち、そこにいた老人たちは皆彼女の親族だったが、実際のところ、血縁関係に対する感覚は薄かった。
鈴木家に戻ってから、鈴木家で家族愛を、一橋貴明のもとで恋愛を感じることができた。
巫霊とのDNAの一致度が高いことを知った時、彼女は自分の出自が単純なものではないことを悟ったが、古代民族と関係があるとは思ってもみなかった。
それでも、彼女は心の中でこの妹を受け入れていた。
巫霊が特殊捜査課にほとんど殺されそうになった時の感情は、偽りようのないものだった。
喜怒哀楽を学び、鈴木月瑠はウェールズ公爵ご夫妻の意図も理解できた。この末娘に彼女を探させたのは、本当に巫玉木を愛していたからだ。