第662章 天が結んだ運命のカップル

「父と母の姿を見たいわ」鈴木月瑠は彼の胸から顔を上げ、携帯を手に取ってウェールズ公爵ご夫妻の数少ない写真を探し始めた。

ウェールズ公爵ご夫妻は王室の中で最も控えめな人物で、名前がニュースで触れられる程度で、写真さえ撮られたことがなかった。

彼らがこれほど慎重なのは、写真を通じて外部から巫族のことが調べられるのを防ぐためだった。

巫族の情報は十分に秘密にされているとはいえ、念には念を入れた方がよかった。

そのため、鈴木月瑠がこの夫婦の写真を探すのは容易ではなかった。

毎年ギリシャ王室が公開する王室の家族写真にも、ウェールズ公爵ご夫妻と巫啓の姿はなかった。

そのため、鈴木月瑠は長い間探しても、彼らの写真を見つけることができなかった。

最後には、巫啓から彼らの情報を得ることができた。

ウェールズ公爵ご夫妻の名前はウィリアム レツとビクトリア、これが巫啓が彼女に送った唯一の写真だった。

彼女の母親であるウェールズ公爵夫人は大変美しく、優しく知的な美しさを持ち、その全てが優雅という言葉にぴったりだった。

彼女の父親であるウェールズ公爵殿下もとても端正で、四十歳を過ぎた彼は、成熟した男性の魅力に満ちていた。

彼は巫啓と似た顔立ちで、どちらも穏やかで優しい印象だった。

鈴木月瑠はこの夫婦に少しも似ていなかったが、この集合写真を見た瞬間、これが自分の父と母だと分かった。

血のつながりによる共鳴は、嘘をつくことはできない。

これが鈴木月瑠が初めて実の両親を見た時で、不思議な感覚だった。

いつかギリシャ王室と関わることになるとは思ってもみなかったし、自分の両親が他にいるとも考えていなかった。

しかし鈴木月瑠は憎しみを感じることはなく、鈴木敏が巫玉木を自分に変えたことも恨んでいなかった。

もし彼女が鈴木月瑠でなければ、人生でこれほど多くの大切な人々と出会うことはなかっただろう。

一橋貴明も鈴木のご家族も、あるいは遠藤家の人々も、この短い人生の中で最も優しい存在だった。

真実を知った以上、素直に向き合うべきで、恨むべきではなかった。

帝都に着いたばかりの時、鈴木月瑠の携帯が鳴り、一橋しんていからの着信だった。

鈴木月瑠は画面を確認し、一橋貴明に渡した。「お父さんからよ」

「俺に用があるはずがない」一橋貴明は着信を見もせずに、さらりと言った。