話している最中、遠藤彦と遠藤信之が入ってきた。
鈴木月瑠はゆっくりと後ろから歩いてきて、すでに着替えを済ませていた。
彼女はポケットに両手を入れ、親族すら見下すような怠惰な足取りで、冷淡な表情を浮かべていた。
遠藤母さんと白石初の会話を聞いて、彼女は突然嘲笑うように笑った。
白石初は熱心に近寄り、月瑠を上から下まで見渡しながら、優しく微笑んだ。「これが月瑠ちゃんね。本当に可愛らしいわ」
「伯母さん」月瑠は素直に挨拶した。
「ええ」
白石初は満面の笑みで応え、月瑠を見るなり気に入ってしまったようだった。「可愛い子ね。これは伯母さんからの初めての贈り物よ」
そう言って、赤い封筒を取り出した。
「ありがとうございます」月瑠は笑みを浮かべながら受け取った。
中には銀行カードが入っているはずだった。
白石初が月瑠に贈り物を用意していたのに対し、遠藤母さんは手ぶらだったため、表情が曇った。
遠藤母さんは少し居心地悪そうに、ぎこちなく笑った。「私ったら、月瑠の部屋の手配ばかり考えて、贈り物のことを忘れていたわ」
「必要ありません」
遠藤彦は冷静に言った。「私の娘には、私が最高のものを与えます」
その言葉を聞いて、遠藤母さんは顔色を保てなくなった。
遠藤彦はリビングにほとんど人がいないことに気づき、眉をひそめて冷たい口調で言った。「音美と信博は?月瑠を歓迎しに来ないのか?」
周囲の空気が凍りついた。
遠藤紳史は淡々とした口調で答えた。「信博は勉強しに上がりました。音美は書協の評価を受けに行くので、この頃は書道の練習に忙しいんです」
遠藤彦はそれ以上何も言わず、月瑠の方を向いて尋ねた。「じゃあ、明日の昼食時に信博を紹介しようか?」
月瑠は目尻を上げ、淡々と答えた。「どちらでも」
その後、遠藤彦は月瑠を彼女のために用意した寝室に案内した。
今夜まで、遠藤彦は月瑠が自分の娘だということを誰にも明かしていなかったが、部屋は用意していた。
一方、遠藤母さんは女主人としての立場を示すため、急遽部屋を用意した。
それは15平方メートルの二番目に良い寝室だった。
遠藤彦は遠藤母さんが用意した部屋ではなく、自分が丹精込めて用意した部屋に月瑠を連れて行った。