第606章 殺人の動機

「死んだって？」鈴木月瑠は軽く口角を歪め、その表情はますます冷たくなった。

「詳しい状況はわかりません」

中村楽は首を振り、少し沈んだ声で言った。「さっき伊藤哲から電話があって、中村霜が脳死状態で、遺体はまだ病院にあるそうです」

灯りが女性の顔に落ち、その表情は明暗を行き来し、感情がはっきりとは読み取れなかった。

しかし、良くはなさそうだった。

中村霜はもともと死刑判決を受けるはずだった。いつ死のうと、中村楽にとっては溜飲が下がる出来事のはずだった。

しかし、なぜか中村霜の突然の死に、彼女は危機感を覚えていた。

山本飛陽たちも不思議に思っていた。

事件が中村楽に関係していたため、豊田宏たちもかなり注目していた。

中村霜は当時、自分をあのような状態に追い込んだが、生命の危険はなかったはずだ。なぜ突然死んでしまったのか？

死刑執行期限前の死亡は異常死として扱われ、警察署での調査が必要だった。

そのとき、執事がノックして入ってきて、鈴木静海と鈴木月瑠の方を見て言った。「次郎様、お嬢様、警察が来ております...」

「中村霜の死因が判明し、殺人犯は我が家の者だと言って、逮捕状を持って来ているそうです！」

その言葉が落ちると同時に、警察官が入り口に現れた。

伊藤哲ではなかった。

警察官は部屋の中の中村楽を直接見て、公務的な口調で言った。「中村楽さん、あなたの殺人の証拠を掴みました。これより逮捕いたします！」

関係者が中村楽であり、伊藤哲と中村楽は良好な関係にあったため、疑惑を避けるため、事件は本局の人間が引き継いだ。

中村楽の目には戸惑いの色が浮かんでいたが、警察官が手錠を持って彼女を拘束しようとするのを見て、思わず身を避けた。

池田霄たちはすぐに中村楽の前に立ちはだかり、冷たい声で言った。「一体どういうことですか？中村楽が殺人犯のはずがない」

「誰の許可で鈴木家に逮捕に来たんですか？」

鈴木月瑠は冷たい目つきで警察官を見渡し、腕を組んで冷酷な口調で言った。「江川部長の意向？逮捕状を見せてください！」

江川部長は東京本局のトップで、江川遠、江川一渡は彼の息子だった。

「鈴木月瑠さん、こちらが逮捕状です」警察官は鈴木月瑠に対して非常に恭しい態度で、両手で逮捕状を差し出した。