傍らにいた中村少華が携帯を振りながら言った。「もう録音して七男の若様に送りました」
松本旻は「……」
彼は中村少華を無視し、池田ふうた兄弟に言った。「彼女は目利きの達人忘優だ。今回は騙されることはないだろう」
「騙されたのはお前だけだ」池田ふうたはお茶を啜りながら、ゆっくりとした口調で言い、目尻で松本旻を横目で見た。
松本旻は池田ふうたを睨みつけ、怒りで言葉が出なかった。
司会者が登壇し、オークションが正式に始まった。
全員が展示台に目を向けた。
展示台には青花磁の茶碗があり、口径は通常の茶碗よりも少し小さく、繊細で上品だった。
司会者が言った。「これが今回のオークションの最初の骨董品です。中国宋の時代の大詩人蘇軾の茶碗で、開始価格は50万円です」
「この茶碗はまあまあだな」
静墨は大画面に映し出された骨董品の細部を見て、鈴木月瑠の方を向いて、口角を上げながら尋ねた。「どう?」
鈴木月瑠は軽く口角を下げ、目には傲慢さを秘めながら、ゆっくりと口を開いた。「かなり優れた贋作だけど、価値はないわ」
静墨は口角を引きつらせて「……」
鈴木月瑠は目を細め、目元に薄い笑みを浮かべた。「骨董品は古ければ古いほど価値があるわけじゃないの。工芸が芸術的価値を決めるのよ」
「例えば、清の中期の骨董品、中国雍正年間の単色釉や青花は、芸術的価値が非常に高いわ」
「中国宋元明の時代の骨董品も価値があるけど、清の中期の工芸の方がより成熟していて、外観もより美しいの」
「あそこに出されている贋作は中国宋の時代の陶磁器特有の質朴さが欠けていて、近代の贋作だとすぐにわかるわ」
そして、中国宋の時代から、偽物を作る悪習が特に酷くなり、宮廷でさえ偽の骨董陶磁器が出現したことがあった。
この最初の競売品は真贋の鑑定が容易で、底の印を見るだけで分かる。
骨董品なのに、底の印がこんなに鮮やかなのは見たことがない。
静墨は鈴木月瑠に向かって親指を立てた!
先ほどの茶碗の底の印は一度しか表示されず、下にいる人々は目利きを知らないから、真贋を見分けられないのは当然だった。
すぐに競り合いが始まった!
「60万!」
「65万!」
「80万!」
「100万!」
「……」
10人ほどが競り合いに参加していた。