第796章 誕生日を同じ日に選ぶの？

そのとき、大江凛は一橋貴明に向かって意味ありげに目配せしていた。

「ねえ、貴明、あなたの顔はもう鍋底より真っ黒よ！その表情、嫉妬してるんじゃないかって勘違いしちゃうわ。」

一橋貴明は冷たい目で彼を見た。「嫉妬してるのはお前だろ、お前の家族全員が嫉妬してるんだ。」

大江凛は大笑いした。

一橋貴明と知り合って何年も経つが、こんなに取り乱した姿を見るのは初めてだった。

明らかに嫉妬してるくせに、強情なんだから！

大江凛はわざと言った。「彼女は栗本西州にもサインを求めたわ、きっと西州のことが大好きなんだよ。まあ考えてみれば当然だよね、西州は以前メディアから『国民の夫』と呼ばれていたし、80歳のおばあちゃんから3歳の女の子まで、彼のことを好きじゃない人はいないからね…」

彼が話せば話すほど、一橋貴明の顔は暗くなっていった。

「ねえ、本当に、この子に惚れたんじゃないの？」大江凛はからかうのをやめ、真剣に言った。「ずっと、あなたは三島一珠と結婚すると思ってたんだけど…」

「誰がそんな認識を与えた？」

一橋貴明の瞳は冷たさに満ち、眉間にしわを寄せ、非常に不満そうだった。

大江凛は乾いた咳をした。「業界の皆がそう思ってるじゃん。それに、あなたのお母さんは帰国するたびに三島一珠を連れて様々なパーティーに出席するし、みんな三島一珠を未来の一橋若奥様だと思ってるんだよ…」

彼が話している間に、栗本西州が鈴木月瑠を連れてやってきた。

鈴木月瑠がサインされた紙を宝物のようにバッグにしまうのを見て、一橋貴明の表情はさらに悪くなった。

彼は冷たく手を上げ、鈴木月瑠の腕を引っ張って自分の側に引き寄せた。

「ちょっと、何してるの？」

鈴木月瑠は驚いて、横にいる男性を怒って睨みつけた。

「ぷっ！」

大江凛は笑いを抑えきれなかった。

一橋貴明が窮地に立たされるのは千年に一度のことで、なんてこんなに面白いんだろう？

彼が笑っていると、栗本西州が彼の耳元で低い声で言った。「この鈴木お嬢さんをよく見てみろ、見覚えがないか？」

大江凛は顔を上げ、初めて真剣に鈴木月瑠を観察し始めた。

以前は彼女を単に一橋貴明が興味を持つ女性としか見ていなかったので、あまり注目していなかった。

今見ると、彼の視線はすぐに止まった。「確かに見覚えがある…どこかで見たことがある…」