第798章 新顔

「何様のつもりで私の一橋貴明の客を追い出そうとするんだ?」

一橋貴明の目は冷たく厳しく、その瞳の奥に渦巻く冷気は嵐のように押し寄せてきた。三島一珠は足の裏から上へと這い上がる寒気を感じた。

これまでは、瑞男のことが出るたびに、貴明は無条件で妥協してきたのに……

しかし今日、貴明はこの小娘をかばった……

しかも貴明は、鈴木月瑠は彼が招いた客だと言った……

この男はどんな女性とも親しくなることを好まず、津恵が亡くなってからは、この男に近づける女性は彼女だけだった。彼女はずっと、自分が貴明にとって特別な存在だと思っていた……

しかし今、別の女が、彼女が10年かけて築いてきた領域に踏み込み、しかも彼女が思いを寄せる男に守られている……

この感覚は、まるで無数の矢が心臓を貫くようだった。

「ご、ごめんなさい……私が勝手に判断してしまいました」

三島一珠はすぐに頭を下げ、自責の念と後悔に満ちた様子を見せた。

一橋家で10年過ごし、彼女は貴明がどんな性格か十分に理解していた。この男に逆らえば、何の得もないことを知っていた。

むしろ、弱さを見せ、か弱く、委屈そうな表情を浮かべれば……この男の同情心を引き出せるかもしれない。

しかし残念ながら、貴明は彼女を一瞥もしなかった。

彼の視線は淡々と横にいる女性に向けられた。「行こう、中へ」

鈴木月瑠はうなずき、冷たい眼差しをゆっくりと三島一珠に向けてから、一橋貴明に続いて邸内に入った。

二人が並んで歩く後ろ姿を見て、三島一珠の目には深い憎悪が浮かんだ。

邸宅のリビングは、賑やかな雰囲気に包まれていた。

ほとんどの客がすでに到着し、一橋奥様を囲んで話していた。

一橋奥様は今年55歳だが、時の流れは彼女に特別に優しく、半世紀を超える年齢にもかかわらず、顔にはしわひとつ見当たらなかった。

優雅で気品ある雰囲気を纏い、主席に座ると、まるで40歳にも満たない貴婦人のようだった。

もし彼女の周りで「おばあちゃん」と呼ぶ子供たちがいなければ、一橋奥様がすでに55歳だとは誰も信じないだろう。

「おばあちゃん、これが私からのお誕生日プレゼントよ。世界で一番一番一番きれいな真珠のネックレスだよ!」

一橋諭知は宝物を披露するように、自分が丹精込めて選んだプレゼントを差し出し、一橋奥様の前に置いた。