「鈴木おばさん、やっと来てくれたんですね!」
一橋晶は歩み寄り、鈴木月瑠の前に立った。
いつもは冷たい彼の表情に、少し喜びが浮かんだ。「鈴木おばさんがここは遠すぎると思って、来てくれないかと思いました」
「そんなことないわよ」鈴木月瑠はかがんで彼の髪を撫でた。「約束したことは必ず守るわ」
その言葉を聞いて、一橋奥様の険しかった眉が急に和らいだ。
彼女は微笑んで言った。「そうか、鈴木お嬢さんは晶が招いたお客様だったのね。どうぞお座りください」
「月瑠ちゃん!うちに来るなら教えてよ!」希崎は不満そうな顔で近づいてきた。「知っていたら、英明に車で迎えに行かせたのに。そうしたら君は僕のお客さんになれたのに...」
小さな子は口をとがらせ、全身から酸っぱい雰囲気を漂わせていた。
鈴木月瑠は頭を抱えながら彼の小さな手を握った。「希崎、私がここに来るのが嫌なの?じゃあ帰ろうかな?」
「帰っちゃダメ!」希崎はすぐに彼女の首に抱きついて、強引に言った。「うちに来たからには帰さないよ、ふん!」
彼は一生涯、月瑠を離したくなかった!
鈴木月瑠の首は希崎に抱きしめられ、もう一方の手は一橋晶に引かれていた。
彼女はリビングの真ん中にしゃがみ込み、多くの人々の視線が彼女に注がれていた。皆の表情はさまざまで、呆然としていると言っても過言ではなかった。
この女性は誰なのか、どうして一橋家の二人の若坊ちゃまの心をこんなにも掴んでいるのだろう?
一橋奥様の鋭い目がまた細められた。
晶は貴明と同じ性格で、幼い頃から小さな氷山のようだった。彼女のような祖母に対してさえ、小さな子はめったに笑顔を見せなかった。
しかし今、その小さな氷山は、この鈴木お嬢さんの前で溶けていた。
そして希崎も、幼い頃から目が高く、誰も眼中になかった子だ。時には彼女がおばあちゃんとしてキスしたり抱きしめたりしようとしても、この子はもじもじとためらっていた。
しかし今、希崎はこの鈴木お嬢さんの首に腕を回し、離そうとしない。
彼女の二人の孫をこれほど親しくさせることができる、この鈴木お嬢さんは、一体何者なのだろうか?
「母さん、お誕生日おめでとう。これは特別に用意した贈り物です」
一橋貴明が突然口を開き、部屋の静寂を破った。