第23章 大嘘つき

藤原徹の予想が正しければ、彼にキスをするたびに高倉海鈴は食べ物本来の味を感じることができるのだ。

嘘つき!大嘘つき!好きだなんて!彼を調味料として使っているだけじゃない!

高野広は藤原徹の表情が暗くなっていくのを恐る恐る見つめながら、「社、社長は奥様の体調を心配されているんですか?もしご心配でしたら、木村肇を呼んで奥様の全身検査をさせましょうか?」

藤原徹は冷笑して:「必要ない」

高野広:「……」

藤原徹が怒りながら書斎のドアを閉めるのを見て、高野広は心臓が飛び出しそうになった。社長の最近の機嫌は本当に変わりやすすぎる、まさに虎を伴うが如しだ。

二人の騒ぎが大きかったため、高倉海鈴は思わず顔を上げ、ちょうど高野広の助けを求めるような目と合った。

高倉海鈴:「……また怒ってるの?」

高野広は突然泣きたくなった、社長は本当に扱いが難しすぎる!

「大丈夫よ、すぐに機嫌が直るわ」高倉海鈴は経験豊富そうな様子で言った。

高野広は首を振った、そう簡単には収まらないだろうと思った。

解決には当事者が必要だ、彼は眼鏡を直し、真面目な顔で高倉海鈴の向かいに座って尋ねた:「奥様、社長のことがお好きなんですか?きっとお好きなはずですよね?そうでなければ結婚なさるはずがないと思うのですが」

そう言いながら、こっそりスマートフォンの録音ボタンを押した。

「好き?」

高倉海鈴は思わず問い返した:「何を好きというの?」

高野広:「???」

「好きというのは、会えないときに会いたくなって、会えたときには抱きしめたくなったり、キスしたくなったり、ずっと一緒にいたいと思うことです…よね?」

生まれてこの方恋愛経験のない彼が、既婚女性に恋愛分析をするなんて何という皮肉だろう!

高倉海鈴は彼の言葉と自分の状況を一つ一つ照らし合わせた。藤原徹にキスをして味覚を得たいという以外は、他の条件は当てはまらない。

「じゃあ、私は彼のことが好きじゃないのかもしれないわね」