第36章 彼女は盗作したのよ

会場は一瞬にして静まり返った。

彼らは呆然と高倉海鈴を見つめ、どう反応すればいいのか分からなかった。

高倉海鈴を知らない多くの人々が、こっそりと囁き合っていた。

「彼女は誰?」

「知らないわ。見たことないけど、すごく綺麗な人ね」

「バカね、こんな場面で容姿のことばかり。どんなに綺麗でも、頭が悪いのは致命的よ!」

審査員の選択に公然と異議を唱えるなんて、この女性は頭がおかしくなったのだろう。

彼らは高倉海鈴を知らなかったが、高倉彩芽のことは知っていた。多くの学生たちの心の中で、高倉彩芽の一位は当然の結果だった。

藤原徹も高倉海鈴の突然の行動に驚いた。彼は横目で高倉海鈴を見た。

こんな大騒ぎになっているのに、女性の表情は変わらず、相変わらず眠たそうな様子で、赤い唇がかすかに上がっていた。

高野広は唾を飲み込んで「奥様、奥様は...」

彼は高倉海鈴と高倉彩芽が仲が悪いことを知っていたが、高倉彩芽を辱めたいなら場所を考えるべきだった!

これだけの審査員が選んだ一位を、コンテストにも参加していない学生が疑問視できるわけがない!

この大勢の中で、谷口敦だけが胸をなでおろした。よかった、高倉さんがついに現れた。

この出来事があまりにも突然で、司会者が下の役員たちに目配せして対処法を尋ねようとした時、学校側の役員たちが全く相手にしていないことに気付いた!

司会者は呆然とした。

高倉彩芽はマイクを握りしめ、高倉海鈴と目を合わせ、長い沈黙の後、彼女の優しい声がマイクを通して会場の隅々まで響き渡った。

「お姉さん、もう止めてください。私知っています。あなたがこのコンテストで一位を取りたかったこと、藤原財閥に入ってデザイナーの夢を叶えたかったこと。でも、あなたはコンテストに参加する勇気すらなかった」

高倉彩芽は唇を噛んで、これから言うことが彼女にとって少し辛いようだった。「あなたは私の姉ですが、言わなければならないことがあります。ファッションデザイナーとして、私たちは革新的であるべきで、すべての困難に立ち向かう勇気が必要です。前進し続けることでのみ、私たちデザイナーの新時代を切り開くことができるのです」