第172章 ダサい告白

高倉海鈴はステージを降りた後、意味深げに高倉彩芽を一瞥し、その後すぐに立ち去った。

その一瞥に彩芽は胸がドキリとした。

「涼介兄、渡辺さんが不正をしていたなんて。私が姉さんを誤解していたなんて...姉さんが怒らないといいのですが...」

藤原涼介の目に異色が閃いた。彼は彩芽がただ高倉海鈴が間違った道に進むことを心配していただけだと思い、そもそもこの件で彼女を責めるべきではないと考えた。

「心配しないで。私が海鈴に話して、君に悪意はなかったと伝えるから。彼女は絶対に怒らないよ。」

……

会場の外。

藤原徹は車の中で、口元に微かな笑みを浮かべていた。

高野広は不思議そうに藤原徹を見つめた。奥様があれほど素晴らしい演技を見せたのに、社長はなぜ何の反応も示さないのだろう?

高野副官は自分が何かすべきだと感じた。

彼は探るように切り出した:「社長、奥様がもうすぐ出てこられます。何も言わないのは冷たく距離を置いているように見えますよ。奥様を少し褒めてみてはどうですか?そうすれば、もっと社長のことを好きになってくれるはずです。」

藤原徹は目を上げ、平然と彼を見つめた。

高野広は諦めずに続けた:「あの陸田進という男は、社長ほどお金も持っていないし、社長ほどハンサムでもないのに、なぜ初対面から奥様と話ができるんでしょう?それは甘い言葉を使えるからです。絶対に奥様を取られないように、社長も優しくなることを学ばなければいけません!」

陸田進?

藤原徹は眉をひそめた。なぜ高倉海鈴が陸田進と話をする必要があるのか?

彼女と陸田進は初対面のはずだ。そんなに親しくなるはずがない。

しかし、高野広の言うことにも一理ある。あの陸田進は確かに下心があるようだ。

彼は目を細め、冷たい雰囲気を漂わせた。

そのとき、高倉海鈴が会場の入り口から出てきて、直接藤原徹の方へ歩いてきた。

彼女は三歩を二歩で進み、素早く車に乗り込んだ。

高野広はすぐに咳払いをし、焦った様子で落ち着かない様子を見せた。

藤原徹は平然と言った:「君の訳した詩を聞いたが、一つの言葉が少し正確ではない。『至死不渝』と訳した方がより適切だろう。」

高野広:「……」