午後になると、デザイナーたちが次々とデザイン案を提出し、主催者は選手たちに予約票を持って材料エリアへ材料を受け取りに行くよう通知した。
八尾夢子とジェイソンが先に材料を受け取り、デザインホールに戻ろうとした時、八尾夢子は突然叫んだ。「あっ!灰霊珠を取り忘れちゃった。桂もいないし、私、取りに戻ってきます。」
ジェイソンは不機嫌そうに言った。「後にしろよ。まずは作品の本体を確認しないと。」
「でも……」
八尾夢子は困った様子で言った。「だめよ、私と海鈴が選んだ材料がよく似てるの。もし間違えたらどうするの?それに彼女は……」
ジェイソンは大声で叫んだ。「何を恐れているんだ?大勢の人がいる中で、彼女が何かできるとでも?後ろ盾があるからって、そんな露骨に材料を壊すなんてできるわけないだろう!」
「夢子、私が取りに行ってあげるよ!」その時、見覚えのある顔が近づいてきて、優しい表情で八尾夢子を見つめた。
八尾夢子は桃のように美しい顔立ちで、スタイルも抜群で、優しい眼差しを持っていた。近づいてきた男性は心を揺さぶられ、「八尾さん、私は松下達也の友人です。彼から頼まれて、あなたのお世話をすることになりました。ちょうど材料を取りに行くところなので、代わりに取ってきましょう。」
彼らの業界で、八尾夢子は女神のような存在だった。八尾家のお嬢様という身分に加え、容姿も体型も申し分なく、自身のアパレルブランドとジュエリーブランドを持ち、さらに卓越したデザインの才能を持っていた。そんな女性は、すべての男性の理想の恋人だろう。
彼女は男性の気持ちをよく理解していた。可愛らしく、目を潤ませながら、「田村浩さん、ありがとうございます。私が…うっかりしていたせいで…私が必要なのは灰霊珠です。ご存知だと思いますが。」
田村浩は頷き、ちょうど高倉海鈴が通り過ぎるのを見て、顔が急に曇った。
高倉海鈴のような下賤な女が夢子を虐めるなんて。夢子は彼らの仲間たちのアイドルなのに。誰が彼女を虐めようものなら、それは彼らのような名家の子息たちに敵対するようなものだ!
……
しばらくして、田村浩が材料を持ち帰ってきた。八尾夢子はそれを手に取り、明かりに照らして確認し、得意げに笑った。
まさにこの珠だ。高倉海鈴が必要とする霊玉珠。そして彼女が予約していた灰霊珠は、田村浩は持ってこなかった。