第422話 材料を間違えた

高倉海鈴も少し驚いた。まさか試合会場で材料を破壊する人がいるとは思わなかった。もし捕まったら、試合資格の剥奪だけでなく、今後デザイン界で生きていくことも難しくなるだろう。

会場にいる人々は著名なデザイナーばかりで、もちろん怒りを表すことはなかったが、アシスタントたちは非常に憤慨していた。材料エリアの雰囲気は非常に気まずいものとなっていた。

高倉海鈴が入室すると、テーブルの上に既に破壊された灰霊珠が置かれているのが見えた。

灰霊珠と霊玉珠は見た目は似ているが、光の当たり方によって全く異なる色を呈する。高倉海鈴は灰霊珠を選んでいなかったが、なぜ誰かが灰霊珠を破壊したのかも理解できなかった。

高倉海鈴はそれを気にせず、自分の材料に向かったが、そこは空っぽだった。彼女は眉をひそめ、スタッフの前に行き、「予約していた霊玉珠はどこにありますか?」と尋ねた。

藤原明が最初に材料を予約したと言っていたのに、今はなくなっているということは、誰かが彼女の材料を密かに持ち去ったということだ。

スタッフは困った表情を浮かべた。今は新人の材料がどこに行ったかを気にしている場合ではなく、誰が材料を破壊したのかを見つけ出すことが最も重要だった。

横にいた年配のスタッフが急いで注意を促した。「ZR社長も来ていますから、問題を起こすのはよくありません。まずは高倉海鈴の問題を解決してから、材料を破壊した人を調べましょう。」

そのとき、田村浩が近づいてきた。

スタッフは監視カメラを確認した後、確信を持って言った。「最後の霊玉珠は田村さんが持って行きました。」

皆の視線が一斉に田村浩に向けられ、材料室の奥の応接室では、ZR社長もゆっくりと目を上げた。

高倉海鈴は深い眼差しで「田村さん、予約表に従って自分の材料を取るのは試合の規則ですが、あなたも霊玉珠が必要だったのですか?私の記憶では、あなたの作品は深い色が主体で、このような艶やかな珠は使わないはずですが、なぜ必要のない霊玉珠を持って行ったのですか?」

場の空気が一気に重くなり、皆が不解な目で田村浩を見つめた。

今日の試合は波乱の連続だった。材料が破壊され、他人の霊玉珠が持ち去られる。この二つの事件が重なり、大会責任者は難しい表情を浮かべた。「田村さん、なぜ霊玉珠を持って行ったのか説明していただけますか?」