第425章 高倉海鈴に改心のチャンスを

「私はブローチが私のものだと言っただけで、材料を壊したとは一言も言っていません。この二つには何の矛盾もありません」高倉海鈴は冷静に答えた。

田村浩は冷ややかに鼻を鳴らした。「言い訳だ！」

高倉海鈴は淡々と微笑んだ。「田村さんこそ言い訳をしているのではありませんか？私が材料を壊したのを目撃したと言いますが、他の誰も見ていません。あなたの一方的な言い分は信用できません。だって、私に敵意を持っているのですから」

「なぜ...なぜ信用できないというんだ？お前は夢子を妬んでいた。負けるのが怖くて夢子の材料を壊した。それが何か間違っているのか？私は確かに見たんだ。お前を冤罪に陥れる理由なんてない！」

田村浩は正論を振りかざした。「私とお前は初対面だ。理由もなくお前を攻撃する必要があるのか？真実を語ることまで疑われなければならないのか？私はただみんなが騙されないようにしたいだけだ」

八尾夢子はその様子を見て、諭すように言った。「海鈴、もうやめましょう。実は認めても何も問題ないのよ。あなたは新人だから、みんなも責めたりしないわ。この件は他のデザイナーにもそれほど悪い影響は与えていないし、何も言わないと思うわ。体調不良で棄権したと外部に伝えれば、できるだけあなたの名誉は守れるわ」

そして彼女は腰を折って深々と頭を下げ、優しい表情で続けた。「皆様、確かに海鈴は間違いを犯しましたが、まだ若くて初めての大会なんです。どうか彼女にチャンスをください。この件は外部に漏らさないでいただけませんか。海鈴は必ず反省して、二度とこのようなことはしないと信じています。お願いします」

一同はしばらく躊躇した後、八尾夢子という当事者がここまで言うなら、もう何も言えないと思い、八尾夢子の顔を立てて高倉海鈴に改心のチャンスを与えることにし、頷いた。

八尾夢子は振り返り、優しく微笑んで言った。「海鈴、みんなが追及しないって言ってくれたわ。これで、あなたの名誉も守られるし、大会も普通に進められるわ。もう...」

「八尾夢子、何を理解ある振りをしているんだ？これは高倉海鈴に罪を認めさせる別の形の強要じゃないか？」

八尾夢子の言葉が終わらないうちに、怒りを含んだ声が響いた。