高倉海鈴は振り向いて言った。「二人一組でなければならないという規定はありますか?」
「いいえ、そうではないですが……」
「それならいいわ。私は一人で参加します」高倉海鈴はそう言うと、冷淡な態度でデザインホールに入っていった。八尾夢子には一瞥すら与えず、孔雀のように高慢な様子だった。
八尾夢子は顔色を悪くし、歯を食いしばったが、人前だったので感情を爆発させることはできず、ただぎこちなく笑って言った。「海鈴ちゃんは本当に実力があるのね!遠山初美さんのお友達だから、きっと才能があるはずよ。ジェイソンが来たら、挨拶に行かせましょう。もしかしたら二人は知り合いかもしれないわ!」
高倉海鈴はデザインホールに入ると、自分の席を見つけた。29番だった。
デザイナーは番号順に着席し、その後数日間ここで自分のデザインを完成させなければならない。全過程は監視カメラで記録され、デザインの真正性と公平性が保証される。
「海鈴さん!あなたも来たの!」驚いた女性の声が耳元で響いた。
高倉海鈴が振り向くと、木村香織が驚いた表情で彼女を見つめていた。すぐに道具を置いて興奮した様子で駆け寄ってきた。「あなたもコンテストに参加するの?お兄さんから聞いていたけど、嘘だと思っていたわ!遠山初美さんのお友達だって聞いたから、きっと有名なデザイナーだと思ったのに、どうして20番以降の席なの?」
デザイン会場には全部で30の番号があり、最初の5番までは審査員席の前にあり、広々として明るく、さらに露出度も高く、提供される材料も最高級だった。
20番以降の番号は無名の新人用で、スペースは狭く照明も暗い。さらに重要なことに、デザインに必要な材料は他の人が選んだ残りものかもしれず、デザイン制作に大きな影響を与える。
そのため木村香織は不思議に思った。なぜ高倉海鈴が29番、材料エリアから最も遠い位置にいるのか。
高倉海鈴は眉を上げて尋ねた。「1番は誰?」
木村香織は躊躇なく答えた。「もちろん八尾夢子よ!今じゃ彼女の顔を見るだけで吐き気がするわ。パーティーで騒ぎを起こしたのに、まだ人前に出る勇気があるなんて!」
高倉海鈴は頷いた。「予想通りね」