第481章 彼女の持参金

鈴木華子はほっと息をつき、愛情深そうに装って言った。「海鈴、ほら、彩芽はもう代償を払ったでしょう。顔も体も傷だらけだし、それに彩芽と涼介の結婚も破談になってしまったわ。もう怒りも収まったでしょう?」

来客たちは事態がここまで発展したのを見て、とっくに逃げ出したかったが、藤原徹がそこに座っているため、誰も最初の一歩を踏み出す勇気がなかった。

高倉海鈴は人々の熱い視線の中で、さらりと口を開いた。「私の母が高倉家に嫁いできた時の持参金について、久保菫さんがその持参金を彩芽の持参金として藤原涼介の家に持っていくつもりだと聞きましたが?」

この言葉を聞いて、久保朱里は胸がドキリとし、色を失った。「海鈴、私は...私はてっきり...」

高倉国生は藤原徹の暗い眼差しを見て、慌てて前に出て、おずおずと説明した。「海鈴、誤解しないで!私たちはその持参金を横取りするつもりじゃない。ただ...今、高倉家の会社に問題が起きて、一時的にお金が用意できなくて、彩芽がもうすぐ結婚する、しかも藤原家の御曹司と結婚するということで、一時的に借りようと思って...お母さんの持参金を彩芽に貸して、高倉家が立ち直ったら必ず返すつもりだったんだ。」

「ふん。」高倉海鈴は冷笑した。「でも彩芽と藤原涼介は今結婚できなくなったわ。この持参金は本来の持ち主に返すべきじゃないの?」

高倉国生は眉をひそめ、背中から冷や汗が流れ、久保朱里も恐怖に満ちた表情を浮かべ、二人はそこに立ったまま全身が寒気に包まれているかのように感じていた。

高倉国生は黙って俯いた。夏目秋が残した持参金は非常に価値があり、高倉家数軒分に相当するものだった。

高倉家は今や会社を失い、夏目秋が残した財産と企業だけを頼りに再起を図ろうとしていた。もしこの金がなければ、彼らは大変な事態に陥るだろう。

しかも、この持参金は長年彼の手元にあった。これほど長い間、なぜ高倉海鈴が返せと言ったら返さなければならないのか?

高倉国生は難色を示したが、もし同意しなければ、きっと藤原社長は簡単には許してくれないだろう。命の保証さえないかもしれない!