木村香織の話を聞いて、藤原明の表情が暗くなった。「高倉家が、高倉海鈴の母の遺品をオークションに出すとは?」
藤原明は即座にパドルを上げ、その翡翠の首飾りを落札すると、急いでその場を去った。
……
渡道ホール。
高倉海鈴は藤原明からの電話を受け、瞳が暗くなった。
藤原徹は冷たい目つきで「高倉家にはまだお前の母さんの装飾品が残っているのか?」と尋ねた。
高倉海鈴は頷いた。「母は多くの店舗を所有していて、高倉グループの他にも、数多くの価値のある宝石や装飾品があって、どれも一級品だったわ」
藤原徹は「それらの装飾品は今どこにある?」と尋ねた。
「一部は私が取り戻したけど、まだ取り戻せていないものもあるの。法律上、母の遺言に記載されていない財産は、高倉国生に処分権があって、私には取り戻す権利がないの」
高倉海鈴の母の遺言には、高倉グループと店舗、そして一部の宝石装飾品は高倉海鈴に相続させると明確に記されており、たとえ高倉家が横取りしようとしても不可能だった。
遺言に記載されていないものは取り戻せないが、彼女は一つも高倉家に残したくなかった。
その時、藤原徹は軽く笑って「俺が取り戻してやる」と言った。
高倉海鈴は目を輝かせた。「どうやって?」
男は長い指でテーブルを軽く叩きながら、淡々と言った。「それらの宝石装飾品は全て母さんの持参金だったよな?」
意味深な笑みを浮かべながら「我が国の法律では、夏目秋の一人娘である君には、結婚の際に母親の持参金を持参金として持っていく権利がある」
「たとえ彼女が亡くなって何年経っていても、高倉国生に新しい愛人と私生児がいても、結婚を理由に母の持参金を要求するのは法的に認められており、誰にも拒否する権利はない」
高倉海鈴は急に顔を上げた。
その通り!
国の法律はそう定めている。結婚を理由に母の持参金を要求すれば、高倉家の同意は関係ない。最悪でも裁判所で争えばいい。
でも……
藤原徹は体を横に向け、彼女を抱き寄せながら、絹のような髪を優しく撫でた。その声には危険な響きが含まれていた。「高倉家の人間は、高倉彩芽が家の福の星で、藤原家の息子と婚約したことで高倉家に無限の利益をもたらすと思っているようだな。今こそ、誰が本当の福の星なのか、そして藤原涼介が君の靴を持つ資格すらないことを知らしめてやろう」