第544章 腕がないのに器用な仕事を引き受けるな

人々は恐れて数歩後退し、目を凝らして八尾夢子を見つめていた。

八尾夢子は困惑した表情を浮かべた。この馬は先ほどまで高倉海鈴の側にいた時は大人しかったのに、なぜ自分の側に来たとたん、突然暴れ出したのだろう?

高倉海鈴が乗りこなせる馬を、自分が乗りこなせないなんて、そんなはずがない!

八尾夢子は気まずそうに笑って、「私も長い間乗馬をしていなかったので、少し慣れていないみたいで、この馬を驚かせてしまったようです」と言った。

彼女の後ろにいた人々は慌てて慰めた。「大丈夫ですよ、この馬は気性が荒そうに見えますが、夢子さんは乗馬の達人ですから、この馬を馴らすのは時間の問題です」

八尾夢子の表情は和らいだものの、緊張で手のひらに汗をかいていた。それでも歯を食いしばって手綱を握り締め、鐙に足をかけ、再び馬に乗ろうとした——

しかしその馬はさらに荒れ狂い、激しく跳ね上がって、彼女を振り落としてしまった。

場内は水を打ったように静まり返った。

三度試みても馬に乗ることすらできず、これは八尾夢子の乗馬の腕前が大したことないことを十分に物語っていた。乗馬の達人を自負していた八尾夢子は、恥ずかしさのあまり地面に穴があれば入りたい気持ちだった。

誰も声を発することができない中、高倉海鈴だけが真剣な表情で彼女を見つめ、ため息をついた。「はぁ!八尾さんは乗馬が得意だと言っていましたが、結局馬にも乗れないんですね!」

空気は恐ろしいほど静かで、馬も大人しく傍らに立ち、無邪気な目をしていた。まるで目の前の出来事とは無関係であるかのように。

八尾夢子は口角を引きつらせ、ひどく不機嫌な表情を浮かべながら、手綱を強く握り締め、歯を食いしばって無理やり馬に乗った。

高倉海鈴は目を細めた。あれは兄が贈ってくれた馬で、普段は叱ることさえ忍びないのに、八尾夢子は自分の可愛い子をこんなにも乱暴に扱っている。

八尾夢子はようやく馬に乗ることができ、やっとほっと息をついた。振り返って軽く微笑んで言った。「海鈴、この馬は確かに気性が荒いわね。さっきあなたに乗らせなくて良かったわ。もし怪我でもしたら大変だったもの」