第546章 賭け事

八尾夢子は得意げな笑みを浮かべていた。

損失がないなんてことはない。もし高倉海鈴がこの馬を手なずけられなければ、みんなの前で恥をかくことになる。しかも、さっき皆が高倉海鈴の彼女への皮肉を聞いていたのだから。

そうなれば、藤原奥様は自身の乗馬の腕前が未熟なくせに、人を嘲笑い、嫉妬深い女だという噂がすぐに広まるだろう。

ところが、高倉海鈴は尻込みし、躊躇いがちに言った。「でも、八尾さんは乗馬の名手なのに落馬してしまったわ。私、怖いわ。馬から落ちたら、きっとすごく痛いでしょう！皆さんの賭け金は魅力的だけど、私の夫は裕福で権力もあるし、この程度のことで困らないわ。こんな小さな利益のために自分を傷つけるなんて、全く割に合わないわ！」

「それに、八尾さんの言う通り、私は田舎育ちで乗馬の練習なんてしたことがないし、馬に乗ったこともないの。もし手なずけられなかったら、きっと八尾さん以上にひどい目に遭うわ。」

陸田進は平然とした表情で、しばらく考えた後、高倉海鈴は金額が少ないと思っているのだろうと察した。

八尾夢子はこの言葉を聞いて、すぐに興奮して言った。「私の翡翠宝石一式を賭けるわ。海鈴、もしあなたがこの馬を手なずけられたら、私の大切にしている翡翠はあなたのものよ！」

高倉海鈴は黙ったまま、これらを全部合わせていくらになるかを心の中で計算していた。でも、まだ足りない。本当に罠にはめたい相手がまだ賭けに参加していないのだから！

そのため、彼女はまだ難色を示して、「でも...」と言った。

「高倉さん」陸田進はゆっくりと口を開いた。「皆さんがこれほど気前よく出してくださるなら、私も傍観者というわけにはいきませんね。もしあなたが本当にこの馬を手なずけられたら、陸田は陸田家の株式5%を譲渡しましょう。必ず約束は守ります。いかがでしょうか？」

轟――！！

皆が息を呑んだ。

藤原明も目を見開いて、信じられない様子で陸田進を見つめた。

陸田家の株式5%を高倉海鈴に譲渡する？

陸田家の人々がこんなことを認めるはずがない。5%と聞くと少なく感じるかもしれないが、陸田家のような名門の5%の株式は巨額の財産に相当する。しかも、陸田家の株式は多くの人に分散しているので、陸田進の持ち分もそれほど多くないはずだ。これほどの株式を譲渡するなんて、予想外の太っ腹さだ。