第585章 なんという誤りを誤りのままに

夏目彩美は続けて言った。「久保家は最高級の名門ではないけれど、二人の娘を裕福に育てることは十分できます。海鈴を次女にすることが何か悪いことでしょうか？私が実の娘を粗末に扱うはずがありません。彼女はこれまでスラム街に住んでいたのに、今は久保家の別荘に住んでいて、彼女にとっては百倍も良くなっているはずです。なのになぜ戻ってきたら真美を追い出そうとするのでしょうか？」

「それに真美は大阪のトップクラスの令嬢なのです。もし彼女が私たちの実の娘ではないと知られたら、久保家の面目は丸つぶれです。真美はもう二度と顔を上げて生きていけなくなります！」

「最初から子供が取り違えられていたのなら、なぜそのままにしておけないのでしょうか。海鈴は久保家のお嬢様という身分こそないものの、真美が持っているものは全て与えられます。私も決して彼女を粗末には扱いません。なぜ真美と身分を争わなければならないのでしょう。もう少し寛容になれないのでしょうか？」

「真美はトップクラスの令嬢で、琴棋書画、教養、礼儀作法、ダンス、どれをとっても一流なのです。」

「でも海鈴は田舎育ちで、パーティーに出たこともなければ、ドレスの選び方も知らない。高級ブランドが何なのかも分からない。こんな久保家のお嬢様では、外に出たら恥をかくだけです！」

夏目彩美は皆の前で、心の内を一気に吐き出した。

その場は水を打ったように静まり返った。

西村奥様は冷たい目で彼女を見つめ、静寂の中で拍手を始めた。

「よくもそのままにしておけると言えたものね！つまりあなたは、海鈴があなたたちの実の娘だけれど、今久保家に戻れただけでも光栄なことで、真美は幼い頃から贅沢に育てられたから少しの不便も味わわせてはいけない、というわけね？」

西村奥様は手を大きく振り、「秀太、今日から西村家と久保家の関係を断絶し、一切の往来を禁止すること、そして海鈴は我が西村家のお嬢様となることを宣言しなさい！」

夏目彩美は歯を食いしばった。娘が西村家に行くなら、それは真美であるべきだ。結局、真美は彼女たちが育てた子供で、高倉海鈴はただの野育ちの娘なのだから。