第605章 母娘と娘は同じ穴の狢

彼女が口を開く前に、久保政宗は冷ややかに鼻を鳴らした。「父上！事情もわからないうちに、人を追い出すのは早すぎますよ！もしかしたらこの男の言うことが本当かもしれません。海鈴は田舎育ちですから、あの無謀な性格なら、きっと男と関係を持っていたはずです。こんな恥知らずな女が、どうして久保家に相応しいでしょうか？」

「黙れ！」久保統は怒りで血を沸かせた。夏目彩美はすでに疑われているのに、政宗というこの愚か者がさらに火に油を注ぐとは、これは人の口に戸を立てるようなものではないか。

次の瞬間、山下涼介は冷たく口を開いた。「久保の若旦那と久保の奥様は海鈴を信じていないようですね。海鈴が田舎育ちだと軽蔑していますが、なぜ海鈴の身分を奪ったのが誰なのか考えないのですか？彼女が田舎に流されることになった原因は誰なのですか？」

久保家の人々は青ざめた。

山下涼介は皆を横目で見ながら、「久保家の女中が海鈴と久保真美を取り替えたと聞きましたが、その女中は久保真美の実の母親だそうですね。今でもその女中は久保家の本邸で贅沢な暮らしをしている。では、海鈴が受けたこの全ての苦しみは誰が償うのでしょうか？」

「久保家の商売が悪くなるのも当然です。モラルの欠如した人間が成功するはずがありません。会社が久保の若旦那の手に渡れば、久保家は完全に終わるでしょう、はっ！」

久保政宗は怒りに震え、抑えた声で言った。「山下若旦那、私は事実を述べているだけです。」

夏目彩美は険しい目つきで歯を食いしばった。どうしてもこの汚名を海鈴に着せて、完全に這い上がれないようにしなければならない。そうすれば、彼女は久保家のお嬢様の身分を真美と争う資格を失うだろう。

しばらくの沈黙の後、夏目彩美はその男を指さして尋ねた。「あなたと私の娘は一体どういう関係なの？すべて正直に話してください！」

「夏目彩美！もういい加減にしろ！」久保統は怒りを爆発させた。

「私が何をしたというの！もし海鈴が本当にこの男と関係があって、彼の子供を妊娠していたのに、権力のために元の夫を捨てたのなら、私たちは見過ごすわけにはいきません。そうでなければ、世間は久保家が情け知らずだと言うでしょう！」