第602話 日和見が両方に走る

もう一方の宴会場。

これらの来賓は全て青山博之たちが招待した人々で、高倉海鈴は全く関与していなかった。

佐藤家が来たのは、高倉海鈴の命の恩があったからだ。他の家族は青山家、秋山家、山下家と深い繋がりがあり、高倉海鈴の身分も知っていたため、当然彼女の誕生日会に駆けつけたのだ。

高倉海鈴が帝京に行った時、一度波紋を呼び起こしたことがあった。皆、これらの大家族が高倉海鈴を掌中の珠のように扱っていることを知っていた。

そして、皆も高倉海鈴があの方と結婚したことを知っていた。あの方は並の人物ではない。

来賓たちが宴会場に入ると、藤原家の次男、藤原明が皆にカクテルを作っているのを発見し、高倉海鈴の地位の高さをより確信した。

渡辺家の人々は、高倉海鈴が伝説のトップハッカー、クロシオである可能性を突き止めていた。だから渡辺家のお嬢様が帝京から駆けつけてきたのだ。

高倉海鈴が四大財閥の掌中の珠であろうと、藤原奥様であろうと、あるいはクロシオであろうと、これらの身分のどれ一つとっても侮れないものだった。

この時、宴会場は人で溢れかえり、皆が高倉海鈴の周りを取り巻いていて、佐藤愛美たちは歯ぎしりするほど腹を立てていた。

「高倉さん、高倉さん!」

久保真美の方から来た来賓たちが焦って叫んだ。「お誕生日おめでとうございます!高倉さん、私たちも誕生日をお祝いに来たのですが、先ほど久保社長と久保の奥様が私たちを行かせてくれなくて、少し時間がかかってしまいました。きっとお許しいただけると思いますが。」

「そうなんです、高倉さん、元々はあちらでプレゼントを渡してすぐに来るつもりだったんです。でも久保真美さんが私たちを引き止めて少し話をしたものですから、遅くなってしまいました。ほら、荷物を置いたらすぐに急いで来たんです。」

高倉海鈴は意味深な笑みを浮かべ、皆は恐れて慌てて頭を下げた。

藤原明は小声で呟いた。「みんな日和見主義者だ。こちらの来賓の方が格が上だと分かると、海鈴の方に集まってくる。こんな連中は来ても来なくても同じだ。」

「大丈夫ですよ、私は気にしませんから。」高倉海鈴は優しく微笑んだ。