第673章 社長は長い間私の給料を差し引いていない

藤原徹は自分の体のことをよく分かっていた。健康だったが、ただ一つ理解できないのは、以前、彼と高倉海鈴は同じベッドで寝ていたのだろうか?

「以前は……一緒に寝ていたの?」

高野広は恐ろしそうな顔をした。「社長、記憶喪失になったんですか?夫婦なんだから、当然一緒に寝ていましたよ!」

一緒に寝る?でも藤原徹は高倉海鈴のことが好きじゃなかったはずだ。それなのになぜ一緒に寝ていたのか?家でも演技をしなければならないのか、高野広の前でも愛し合っているふりをしなければならないのか?

ずっと同じベッドで寝ていたのなら、なぜ高倉海鈴は突然引っ越したのか?何かに気付いたのか、それとも藤原徹が深く隠していたのか?

藤原徹は高野司に聞いてみようと思った。この男は彼の専属秘書だから、内情を知っているはずだ。

しかし、彼が立ち去ろうとした時、高野広が駆け寄って彼を引き止めた。「社長、最近おかしいですよ!」

藤原徹は眉を上げた。「どうした?」

高野広は考え込むような表情をした後、驚いて目を見開いた。「私が失礼なことを言ったのに、怒らないなんて?最近、給料カットもしていませんよね!」

リビングは静まり返った。高野広の驚いた表情を見て、藤原徹は再び眉をしかめた。以前の藤原徹は部下の給料をよくカットしていたのだろうか?

藤原徹は密かに決意を固め、口を開いた。「安心しろ、これからは給料カットしない」

そう言って、彼は寝室に向かったが、足を止め、高倉海鈴の寝室のドアの前まで回り込んだ。

廊下は暗かった。藤原徹はもう一人の自分が暗闇を恐れることを知っていた。そのため、深夜でも渡道ホールの廊下は明るく照らされていた。それは使用人たちの習慣となっていたが、今は廊下の明かりが消え、別荘全体が暗闇に包まれていた。

以前の藤原徹は明るい照明に慣れていたのに、今の別荘がこんなに暗いのに、誰も不思議に思わないのか?

藤原徹は携帯を取り出し、高野司に電話をかけた。

高野司は驚いた。「社長、もう回復したんじゃなかったんですか?また発作が?」

以前、社長の目は暗闇に耐えられなかったが、奥様が社長の体内の毒を解いたようだ。今は完全には回復していないものの、少なくとも暗闇でも失明することはなくなった。