伊藤仁美は恥ずかしそうに笑って、「実は私も油絵を体系的に学び始めてまだ半月なんです。カーターさんに認めていただけるとは思ってもみませんでした。本当に光栄です」と言った。
周りの人々も慌てて褒め言葉を並べ立て、伊藤仁美の優秀さを称え、カーターさんが彼女のために来たことを褒めそやしたが、責任者だけが困惑した表情で高倉海鈴を見つめていた。
彼は当然、伊藤仁美の絵がカーターの要求に全く達していないことを知っていた。もしカーターが20代の天才女性画家を求めて来たのなら、展覧会でその条件に合う人物は一人しかいない。それは高倉海鈴だった。
高倉海鈴は冷ややかな表情で伊藤仁美の偽善的な顔を見つめ、しばらくして嫌悪感を覚えて顔をそむけた。
しばらくすると、油絵展の参加者全員がカーターさんが伊藤さんを訪ねて来たことを知った。その場にいた人々は皆、カーターさんの国際的な地位を知っており、彼女に認められる人物は間違いなく天才だと理解していた。