第746章 冬島音は彼の弟子

高倉海鈴は淡々と言った。「今は表沙汰にする必要はないわ」

高野司は困惑した表情で「でも、あの人はあなたの作品を盗作したんですよ。プラネットミュージックフェスティバルの優勝者も本来はあなたのはずです！」

「そう単純な話じゃないわ。証拠は特別なタイミングで出さないと最大の効果を発揮できないの。私の友達をいじめた代償を払わせてやるわ！」高倉海鈴は不気味に笑った。

「私のアカウントを盗んだからって、あの曲が彼女のものになると思わないことね。その能力もないくせに、見栄を張るから、自分に面倒が降りかかるだけよ！」

著作権の証明を済ませた後、高倉海鈴は藤原明と共に香り亭へ向かい、木村香織の誕生日パーティーに参加した。

一方、藤原徹はオフィスの窓際に立ち、背後には中年の男性が立っていた。男性は恭しく言った。「冬島様、今回の国際絵画展は東京で開催されます。ぜひともご出席いただきたく存じます」

毎年の国際絵画展で、責任者は冬島志津に出席を依頼していた。彼の影響力があまりにも大きく、世界中に崇拝者がいたからだ。しかし、彼は控えめな性格で、決して姿を見せず、絵画展や競技会にも参加しなかった。

十三年前、油絵界を驚嘆させた一枚の絵が突如として現れた。皆はこれが隠遁している大家の新作だと思っていたが、国際油絵組織が長い調査の末、この絵の作者が十三歳の少年だと判明した。

十三歳の少年がこのような傑作を生み出せるとは誰も想像できなかった。様々な調査を経て、国際油絵組織はついにこの十三歳の少年が冬島志津本人であることを確認した。

残念なことに、冬島志津は他の芸術家とは異なり、絵を描くことは彼にとって単なる娯楽に過ぎなかった。彼の関心はそこになく、暇な時間にしか絵を描かず、新作を発表するのは二、三年に一度だけだった。彼は絵画界での成功など全く気にしていなかった。

国際油絵組織の会長は冬島志津の絵を初めて見た時、会長の座を彼に譲ることを決めたが、残念ながら彼は断った。その後も毎年の国際油絵展には一度も参加しなかった。

この男性は失望感でいっぱいだった。冬島志津はまた参加を断るだろうと予想していたが、次の瞬間...

藤原徹は無関心そうに「いいよ」と言った。