第762話 正体露見

高倉海鈴は斎藤雅也が展示会に来ることを知っていたが、伊藤仁美がどの面下げて来られるのだろうか？

担当者は高倉海鈴が伊藤仁美の名前をじっと見つめているのを見て、説明した。「冬島音さん、この伊藤さんは斎藤さんの弟子で、そのため特別に展示会への参加を許可し、一点の作品を提供していただくことになっています。」

高倉海鈴は平然とした表情を見せた。伊藤仁美と斎藤雅也が再び師弟関係になったことに驚きはなかった。所詮、似た者同士なのだから。

ただ、前回香り亭で伊藤仁美を試したとき、彼女が絵を描けないことがわかったのに、たった数日でどうして展示会に参加できるレベルまで上達したのだろうか？

しばらく考えて、高倉海鈴は理解した。斎藤雅也はゴーストライターを使うのが好きで、多くの弟子がいるのだから、誰かに伊藤仁美の代わりに描かせれば、誰にもバレないだろう。

高倉海鈴はさらに名簿をめくったが、あの名前を見つけることができず、落胆して尋ねた。「冬島志津先輩は来られないのですか？」

担当者は驚いた顔をした。「冬島志津先輩のことですか？」

「はい！」高倉海鈴は不思議そうに答えた。

担当者は目の前の素直な少女を意味深げに見つめた。「冬島音さん、冬島志津先輩とそれほど親しいのなら、来られるかどうかご存知のはずでは？」

冬島志津先輩本人は来られないものの、先ほど電話があり、冬島音さんと一緒に出席すると言っていたのに！

高倉海鈴はこの言葉を聞いても少しも驚かず、淡々と説明した。「私は冬島志津とは面識がありません。この名前を使っているのは、単に私が彼のファンだからです。」

担当者は眉をひそめ、情報欄の「夫婦関係」という文字を見て、深く考え込んでしまった。「……」

高倉海鈴は続けた。「多くの人が私たちを師弟関係だと思っていますが、実際には全く知り合いではありません。ただ私が彼を尊敬していて、だから来られるかどうか聞いてみただけです。」

担当者の目には困惑の色が満ちていた。師弟関係ではないことは分かっているが、夫婦ではないのか？

彼は深いため息をつきながら言った。「冬島志津さんがいつ来られるかは分かりませんが、きっとあなたはご存知のはずです。」

高倉海鈴：「？」十分説明したつもりだったのに。知り合いではないと言ったのに、この担当者はまだ信じてくれないの？