第770話 悪人に天罰あり

斎藤雅也は心臓が震え、不吉な予感がした。次の瞬間、高橋研二郎は一言一言はっきりと言った。「師匠が斎藤雅也を気に入らないのなら、私は正式に宣言します。今日からもう斎藤雅也との師弟関係を絶ちます!」

「いいえ!」斎藤雅也は崩壊したように叫んだ。

この数年間、彼が油絵界で地位を確立できたのは、師匠が高橋研二郎だったからで、どこへ行っても、皆が彼に一目置いてくれたのだ。

高橋研二郎は弟子を取ることを好まず、ただ絵を描くことに専念するのが好きだった。当初は高橋研二郎が彼らの家に恩があり、さらに彼の両親が懇願したため、高橋研二郎は彼を弟子として受け入れることに同意したのだ。しかも彼が唯一の弟子だったため、彼は一躍して油絵界の巨匠級の人物となれたのだ。

もし高橋研二郎が彼との師弟関係を絶てば、彼の地位は一気に転落し、油絵界から消えてしまう可能性が高い。まさに寄らば大樹の陰とはこのことだ。

すべては高倉海鈴のせいだ!この腹立たしい女め!

「先生!そんな!私はこれほど長い間ついてきたのに、今この女のためだけに私を見捨てるんですか?」斎藤雅也は体の力が抜け、地面に崩れ落ち、崩壊したように泣き叫んだ。

高橋研二郎は冷淡な表情で言った。「斎藤雅也、私は前から言っていただろう。画家として、画力は確かに重要だが、本心を失ってはいけない。お前は何度も私の禁忌を犯した。たとえこの件がなくても、私はお前との師弟関係を絶つつもりだった!」

斎藤雅也は全身を震わせた。彼は師匠の言う禁忌が何なのかを知っていた。前回も彼は天才画家を見出し、弟子にしようとしたが、その人は拒否し、師匠の前で騒ぎを起こしたのだ。

その時、師匠は彼に非常に不満を示し、もし次があれば関係を絶つと警告した。

彼は師匠がただの言葉だと思っていた。結局、彼は師匠唯一の弟子で、これほど長い間師弟関係を続けてきたのだから、両親の面子もあり、師匠は絶対に彼を破門しないだろうと思っていた。しかし今は……

斎藤雅也は心の中でよく分かっていた。彼のしたことが広まれば、これからは油絵界で居場所がなくなり、皆から嫌われ、最も一般的な展覧会にも参加する資格を失うだろう。