第839話 あなたがいてよかった

人々の目に希望が再び灯った。今や陸田渚が謝罪したのだから、藤原徹もきっと彼らを、陸田家を許してくれるはずだ。

宴会場は静まり返り、人々は息を殺して、藤原徹の言葉を静かに待っていた。彼が話さない間、誰も催促する勇気はなく、この閻魔様の怒りを買うのを恐れていた。

しばらくの沈黙の後、藤原徹は陸田渚と陸田進の屈辱的な表情に飽きたかのように、ゆっくりと目を開け、どこか無関心な笑みを浮かべて「いいだろう」と言った。

高野司が前に出て、社長の意向を伝えた。「社長は直ちに訴訟を取り下げます。ただし、すべての香水を撤去し、香水瓶を破棄すること、そして社長に十八億円の賠償金を支払うことが条件です」

陸田家の人々は青ざめた顔をしていた。陸田の祖父は胸に鈍い痛みを感じ、言葉も出なかった。しかし、彼らの心がどれほど不本意であっても、この結果を受け入れるしかなかった。

陸田の祖父は拳を固く握りしめ、歯を食いしばって言った。「後ほど、藤原財閥と賠償の詳細について詰めさせていただきます」

その言葉が落ちると、藤原徹は高倉海鈴の手を引いて容赦なく立ち去った。この騒動はついに終わり、陸田家は巨大な代償を払ったが、少なくとも名誉は守れた。

藤原徹たちが去るや否や、陸田の祖父は目の前が真っ暗になって倒れ、体を震わせながら、陸田進と陸田渚を指さしたが、もはや言葉を発する力もなかった。

後悔していた!もし当初、汐と藤原徹を選んでいれば、もし陸田グループを母子に任せていれば、おそらく陸田家は国内有数の企業グループになっていただろう。年老いた自分が若い世代の会社の細々とした事まで心配する必要もなかっただろう。

しかし事態はここまで来てしまい、もう後戻りはできない。進を残すと決めた時から、すべては決まっていたのだ。

すぐに、陸田家は速やかにニュースを抑え込み、顧客に合理的な説明を行い、予約購入した顧客にクーポンを配布することで、今回の危機を乗り切った。

しかし計算してみると、藤原徹への賠償金十八億円に加え、この期間の人件費、物件費、宣伝費などを合わせると、総損失は約二十六億円に上った。

以前、陸田家は既に百億円以上を失っており、わずか数ヶ月の間にさらに二十六億円を失った。大きな会社は既に空洞化し、もはやいかなる嵐にも耐えられない状態となっていた。

……

渡道ホール。