第806話 藤原奥様は山内正

高野司は軽蔑した表情で言った。「夏目さんは海外で長年過ごしてきたのに、デザイナーの山内正を知らないなんて、本当に無駄な時間を過ごしてきたんですね!」

高倉海鈴:「……」

さすが藤原徹の秘書、同じように毒舌だ。

人々は小声で噂し合った。「藤原奥様が山内正なの?」

「山内正の作品は多くないけど、どれも傑作で、国際的な知名度もサリーより高いのに、夏目さんにはどんな資格があって藤原奥様を軽蔑できるの?」

藤原徹の冷たい表情を見て、人々は静かに立ち去り、しばらくすると会場には数人しか残っていなかった。

夏目小夜子は目を伏せ、不機嫌な様子だった。本来は高倉海鈴を公衆の面前で恥をかかせるつもりだったのに、まさか自分で自分の首を絞めることになるとは。

彼女は目を上げて淡々と笑った。「もちろん山内正の名前は知っています。ただ、藤原奥様が山内正だとは思いもしませんでした。」