第861章 救出

突然、高倉海鈴はすすり泣きながら、可愛らしい声で言った。「大丈夫です。誘拐された女性たちのために、怖くても調査に協力します。それに、誘拐犯が電話をかけてきた時に、こっそり録音もしておきました。きっと事件解決の助けになると思います!」

「ただ、あの時はとても怖くて、ちゃんと録音できているか分かりません」そう言って、高倉海鈴はポケットからボイスレコーダーを取り出した。田中峰がそれを受け取ると、表情が一変した。

録音には伊藤家の人々が話し合う声が入っており、人身売買の事実を認める内容だった。すでに大金を稼いでいるのに、まだ手を引こうとしない様子が伺えた。

田中峰は唇を震わせながら、恐ろしいほど険しい表情で言った。「藤原奥様、危険を冒して録音してくださり、私たちの調査に重要な証拠を提供していただき、被害者全員に代わってお礼申し上げます」

藤原奥様は怖くなかったわけではなく、証拠を集めるために冷静を装っていただけだった。か弱い女性であるにもかかわらず、誘拐された際に機転を利かせて録音するとは。藤原奥様は美しいだけでなく、聡明な方だ。藤原社長が彼女を大切にするのも当然だ。

……

すぐに数台のパトカーと救急車が到着した。高倉海鈴は、数十人の着衣の乱れた少女たちが運び出されるのを見て、思わず目を潤ませた。

誰も想像できなかっただろう。文化人を自称する伊藤家が、金のためにこのような汚らわしい、非道な行為を密かに行っていたとは。

少女たちの泣き声が倉庫中に響き渡った。もう二度と出られないと思い、心が死んでいたのかもしれない。まさか生きて脱出できるとは思わなかったのだろう。彼女たちは抱き合って、監禁から解放された喜びと、自分たちの悲惨な運命に涙を流した。

高倉海鈴は、これらの少女たちがどれほどの期間ここに閉じ込められていたのか分からなかった。伊藤家は彼女たちをここに監禁し、暴力と侮辱を加え、食事も着る物も満足に与えなかった。生きた心地もしない日々を送っていたのだ。

もし兄がこの暗部を突き止めていなければ、伊藤家の現在の権力と手段をもってすれば、これらの少女たちはいつ救出されたことだろうか?

彼女たちは声を上げて泣き、まるで一生分の涙を流し尽くすかのようだった。それを見た高倉海鈴も涙を流さずにはいられなかった。