第053章 恋煩い

「複占」

「D-u-o-p-o-l-y。複占とは、売り手が二人だけの市場構造のことです。クールノーモデルは複占を扱っています」

「1点加点」

「エンゲル曲線」

「E-n-g-e-l、c-u-r-v-e。エンゲル曲線は、ある商品の均衡購入量と消費者の所得水準との関係を示すもので、えーと、19世紀のドイツの統計学者エルンスト・エンゲルにちなんで名付けられました」

「1点加点」

「需要の交差弾力性」

「この単語は長すぎて覚えていませんが、概念は覚えています。商品Yの価格が1%変化したときの商品Xの需要量の変化率を示すものです」

「0.5点減点。需要の交差弾力性は英語でCrosselasticityofdemandです。必ず覚えなさい」

……

これは大学の経済学の講義で教授が学生に経済学の専門用語を尋ねているのではない。バスの中で小夭が陳二狗に毎日行う定期テストだ。小夭は英語版の『マクロ経済学』と『ミクロ経済学』をパラパラとめくり、概念を一つ出題して陳二狗に正確な説明をさせる。大学城まではバスで約2時間かかるが、陳二狗は時間を無駄にする習慣がないので、小夭にランダムに抽出テストをさせている。2時間で最初は30問しか正解できなかったが、2週間後には80問程度、今では120問を超えるようになった。平均すると1分に1つの専門用語だ。陳二狗が最も頭を悩ませているのは中国語の概念ではなく、英単語の暗記だ。それは山跳びウサギを捕まえたり、ノロジカの皮を剥いだりするよりもずっと難しい。

阿梅食堂近くの犬小屋には、陳二狗がボロボロになるまで読み込んだ中国語版の経済学教科書が2冊あり、英語版は小夭が特別に買ってあげたものだ。さらに『新東方英語四級單語帳』も用意してあり、これもほとんど粉々になるほど使い込まれている。約1ヶ月で、小夭は陳二狗の記憶力が良いことを知った。異常なほどではないが、数学が得意で、霊気があり、数学だけで受験すれば北京大學と清華大學に入れるような優秀な生徒タイプだ。もし都会で学校に通い、数学オリンピックの訓練を受けていれば、賞を取れたかもしれない。そのため『ミクロ経済学』と『微積分』の学習は半分の努力で済んでいる。