第1章 雞鳴寺、臙脂井;般若壁、虫飛び

「商人も庶民も六朝の風情を帯びている」と朱自清先生に評されるような都市は、六朝古都の南京しかない。

土砂降りの雨が勢いよく降り、黒雲が街を覆い、初めて南京城を訪れた陳二狗は眉をひそめた。朝、100元から70元に値切った安宿を出発し、昨日南京駅の地面で拾った地図を手に、宿の女将から借りた傘を差して雞鳴寺へと向かった。雞籠山と呼ばれる場所に着いた頃には、すっかり濡れネズミになっていた。こんな風情ある名前の古刹なら、きっと人里離れた山奥にあるだろうと思っていたが、雞籠山の周りは意外にも賑やかな市街地で、手が震えてタバコも吸えない陳二狗は、王虎剩大將軍の口癖を真似て「くそったれ、雞鳴だと?まったくペテンだ」と罵った。

陳二狗は地面に屈んで傘の下に隠れ、山に登ろうとしなかった。入場料が5元かかるのを払いたくなかったからだ。本来なら明後日に王虎剩と雞鳴寺で会う約束だったが、安宿でも一日70元かかり、その出費が痛かったので、王虎剩が早めに来てくれることを期待していた。そうすれば二日分の宿泊費を節約できる。幸い、昨夜買ったばかりの安い硬いタバコは無事だった。さもなければ、きっと王虎剩の先祖代々を罵り尽くしていただろう。

「頭上三尺に神様がいるというのに、雨の日に南朝第一の古刹を罵るなんて、雷に打たれても文句は言えないぞ?」