この金は稼ぎにくい

聞冬の車は猛スピードで走っていた。山道を走る時、外を見ると、車がいつ崖から落ちてもおかしくないような恐怖を感じるほどだ。しかし聞冬は速くても安定した運転をしていた。それでも、多くの上り車両はこの狂人が自分たちの車に衝突しないように、聞冬のビュイックを見ると路肩に停車した。

聞冬がこんなにも速く運転している理由は、葉黙が終始冷静な様子を見せているからだった。今、こんな危険な山道でスピードを出しているのは、葉黙を驚かせて心配させ、ゆっくり運転するように言わせたかったからだ。葉黙がそう言えば、すぐに説教するつもりだった。これくらいが速いと思うの?本当の速い運転を見たことないのね。そんなに臆病なら、ゆっくり運転してあげるわ、と。

しかし山道の半分を走っても、葉黙は一言も発しなかった。聞冬は少し驚いて後ろを見ると、葉黙は目を閉じて休んでいた。まるで崖から落ちる危険のある車に乗っているのではなく、くつろいだカフェにいるかのようだ。

聞冬は完全に言葉を失った。怖くないにしても、こんな急な山腹を走っていて、しかも崖の方にガードレールもないのに、少なくとも目を開けて注意を払うべきなのに、彼は眠っているのだ。

これは彼の神経が図太いのか、それとも自分の運転技術を信頼しているのか?でも彼が自分の運転技術を信頼する証拠はどこ?実際、この山腹でこんなに速く運転するのは、彼女自身もちょっと心配していた。

葉黙と初めて会った時も、まるで恐れを知らないような鈍感な人だった。そう思うと、聞冬は葉黙という人物について、少し理解できた気がした。いい方に言えば、彼は若者故に、何も恐れなかった。悪い方に言えば、彼は無鉄砲な人間だ。でも、そんな人が彼女にはちょうど良かった。今の彼女にはこういう人が必要だ。彼がいないと、一人ではこの取引も難しくなりそうだから。

葉黙が車のスピードに関心を示さないのを見ると、聞冬は徐々にスピードを落とした。山腹での運転だから、あのスピードだとやはり危険すぎる。ここはカーブが多すぎる。彼女は山を下りて高速道路に入ってから、スピードを上げようと考えた。

しかしその時、葉黙は目を開け、何気なく尋ねた。「あとどのくらい?」