彼女に振り回された

庄司輝弥は機嫌が良いらしく、林翔太の騒ぎにも怒らなかった。

林翔太はため息をつきながら、この世のものとは思えないほど美しい友人の顔を見つめ、もったいないとばかりに言った。「輝弥、あなたの地位、容姿、スタイルなら、どんな女だって手に入るでしょう?どうしてそんなに…もったいないことを…」

雨宮由衣は服を着替え、2階から降りてきたところで、林翔太の言葉を耳にした。

なぜ林翔太の言葉は、こんなにも聞き覚えがあるのだろう?

「ちょっと変わった趣味で悪ふざけしてるだけならまだしも、もう2年も経つのに…友達として、見ていられないよ…」

林翔太がまだぶつぶつ言っていると、向かいで気だるげな様子で彼を無視していた庄司輝弥が、ふと顔を上げ、2階の方を見た。

林翔太は思わず庄司輝弥の視線の先を追った。

次の瞬間、彼の目は輝き、驚きの色に染まった。

2階には、純白のワンピースを着た少女が立っていた。すらりとしたスタイル、腰まで届く長い髪、輝く瞳、桃のように美しい唇、透き通るような白い肌。まるでこの世のものとは思えないほど美しい。

あまりにも…美しすぎる…

あの妖しい魅力を持つ庄司輝弥の傍にいても、全く引けを取らない。

何よりも心を奪われるのは、霞のように儚げで、守ってあげたくなるような雰囲気だった。

雨宮由衣がダイニングテーブルまで来ても、林翔太はまだ夢を見ているようだった。

雨宮由衣はテーブルを一瞥した。いつもは庄司輝弥から離れた場所に座っていたが、今日は少し考えて、彼の隣に座った。

少女が自分の隣に座るのを見て、庄司輝弥の視線が揺らめいた。

雨宮由衣は、余計なことを言わないでおこうと思い、朝食を食べ始めた。

さっきから、男の鋭い視線がずっと彼女に注がれていた。

いきなり元の姿に戻ったので、内心では不安だった。庄司輝弥がどんな反応をするのか分からなかったのだ。

でも、あんなひどい姿の自分でも受け入れてくれたのだから、美しい自分でいる方が楽しいだろう。

そう考えて、雨宮由衣は安心してお粥をすすり始めた。

その時、すらりとした指が彼女の頬に触れた。

雨宮由衣は緊張し、体が硬直した。

男の指は、お粥に落ちそうになっていた彼女の髪を耳にかけた。

庄司輝弥は椅子に深く腰掛け、彼女の髪に触れた後、ゆっくりと手を戻したが、視線は彼女から離さず、探るような、そして微かな熱を帯びた視線で、彼女の全身と表情をくまなく観察していた。

雨宮由衣はほっと息を吐き、髪が落ちないように手で押さえた。

その時、ようやく我に返った林翔太は、興奮した様子で小声で言った。「輝弥!ついに目が覚めたんだな!最初からこういう、美人で、女らしくて、守ってあげたくなるような女性を選ぶべきだった!どうしてあんな女に振り回されてたんだ!」

「…」振り回されて?

林翔太はさらに言った。「そういえば、あのブスはどこにいったんだ?追い出したのか?」

「…」ブス…

「由衣は、2年前はまだマシだったけど、あの時体重がヤバかったよな!少なくとも75キロはあっただろ!」

「!!!」嘘つき!70キロだったのに!確かに思春期の頃は食べすぎて太ってたけど、75キロ以上になったことなんてない!

「輝弥、あの頃は、あなたの趣味が分からなかったよ。どうしてあんなデブを好きになったんだ?」

「…」デブ…

雨宮由衣は、ついに我慢の限界に達した!

目の前で太っていたと言われて我慢できる女の子なんていない!

「バン!」という音が鳴り響いた!

雨宮由衣は突然箸を勢いよく置き、鋭い視線を林翔太に向けた――

「林!翔!太!75キロだったからって、何が悪い!太ってたからって、何が悪い!あなたの家の米を食べたわけじゃないでしょ!!」