第17章 もう誘惑したら怒るわよ

すぐに、使用人が朝食を運んできて、四人は席に着いて食事を始めた。

雨宮由衣は隣の庄司輝弥を見て、向かい側の林翔太と梅野淳を見た。

この三人の輝かしい大物と同じテーブルで食事をするのは、まるで非現実的な感覚だった。

結局、この三人は将来それぞれの分野で名を馳せる人物なのだから。

しかし、雨宮家は芸能関係の仕事をしているため、由衣が最も注目していたのは主演男優の梅野淳だった。

おそらく由衣の頻繁な視線に気づいたのか、梅野淳は首を傾げ、魅惑的な涼しげな目で彼女にウインクして、「雨宮、サインが欲しい？」と言った。

やばい！あの一瞥が、たまらない！

この男はまさに妖狐そのもの、全国の少女の心を虜にしたのも納得だ。

サイン！もちろん欲しい！

梅野淳は将来のアカデミー賞主演男優なのだ！国内初のアカデミー賞受賞男優！このサインは後で売れば大金になるはず！

今でも、梅野淳は数々の賞を受賞し、現在の芸能界で最も人気があり、全国の少女を熱狂させている男優だ。

彼の直筆サインはもちろん、彼の宣伝写真に写っている電話ボックスでさえ、人気の観光スポットとなり、毎日数え切れないファンが列を作って写真を撮りに来るほどだ。

しかし、あるサイコの独占欲を考慮して、由衣は即座に首を振った。

他の男のサインを大切にするなんて、死にたくなければ無理だ！

由衣が欲しそうな表情を見せながらも、庄司輝弥を一瞥した後すぐに我慢して首を振る様子を見て、梅野淳は軽く笑って、「雨宮、可愛いね」と言った。

由衣：「……」

梅野主演、もういい加減にして！これ以上私を誘惑したら、怒るわよ！あなたのサイコな兄弟の頭上にキノコ雲が出てるの見えないの？

横の林翔太は梅野淳を一瞥し、嫌そうに口を歪めて、「淳、お前の節操はどこいった？雨宮由衣まで口説くなんて……」

梅野淳は指先でバラの花びらの露を優雅に撫で、静かに言った。「この世のすべての女の子は花のようなもの、大切にされ、愛されるべきだ」

この言葉は由衣の心に響き、すぐさま林翔太を睨みつけて言った。「聞いた？見習いなさいよ、独身犬！」

林翔太は即座に逆上した。「なんだと！誰が独身犬だ！お前こそ独身犬だろ！」