翌朝。
雨宮由衣が目を覚ましたとき、庄司輝弥はもういなかった。昨夜いつ帰ったのかも分からない。
まるで幽霊のように現れては消えるんだから。
雨宮由衣は伸びをして、起き上がって洗面所で身支度を整えた。
緑の髪とタトゥーが再び浮世に現れ、キラキラのスパンコールをちりばめたTシャツに、十数個の穴が開いたボロボロのジーンズ、とがったスタッズだらけで移動する釘板のようなブーツ、ゴシック調のメイクで、その効果は抜群だった。
道行く人々の視線が集まることで、彼女の出で立ちのインパクトが証明された。
食堂に向かう途中で、沢田夢子に出会った。
「由衣、ちょうど会いに行こうと思ってたの。一緒に朝ごはん食べましょう!」沢田夢子は彼女を見るなり、親しげに腕を組んできた。
雨宮由衣のその姿を見て、沢田夢子の目が輝いた。まるで満足げな様子だった。
昨夜の自分の言葉を、雨宮由衣はやはり聞き入れたようだ!
食堂に着くと、周りの学生たちは二人を盗み見ながらひそひそと話し合っていた。
「見て見て!雨宮由衣がまた新しい醜さを更新したわ!」
「夢子って優しすぎるわよね。まだあのブスと絶交してないなんて!二人が並ぶと美女と野獣みたい!」
「そんな言い方しないでよ。このブス、なかなかやるわよ。クラスで一番の成績を取っただけじゃなく、クラスの花である藤原雪と文芸委員の橋本夏未に勝って、庄司夏と一緒に舞台劇に出られることになったんだから!」
「マジで?うそでしょ?このブス、そんなに策略巡らせて...私の推しに目をつけたんじゃないでしょうね!」
……
周りの噂話を聞いて、沢田夢子の目が微かに光った。
もしかして雨宮由衣が突然黒田悦男への思いが薄れたのは、庄司夏のせい……
沢田夢子は笑いながら言った。「そうそう、由衣、おめでとう!今回の試験でクラス一位を取ったって聞いたわ?」
雨宮由衣の前には、サツマイモと紫米のお粥がたっぷり入った大きな茶碗、肉まん二個、そして肉三枚と卵二個とウインナー一本が入った中華クレープが並んでいた。食べながら適当に答えた。「うん、適当に受けただけ。どうかした?」
沢田夢子は雨宮由衣の記憶力の良さを知っていたが、クラス一位を取ったと聞いてやはり驚いた。「勉強嫌いって言ってたじゃない。どうして急に頑張り出したの?」