翌朝。
雨宮由衣が目を覚ましたとき、庄司輝弥はもういなかった。昨夜いつ帰ったのかも分からない。
まるで幽霊のように現れては消えるんだから。
雨宮由衣は伸びをして、起き上がって洗面所で身支度を整えた。
緑の髪とタトゥーが再び浮世に現れ、キラキラのスパンコールをちりばめたTシャツに、十数個の穴が開いたボロボロのジーンズ、とがったスタッズだらけで移動する釘板のようなブーツ、ゴシック調のメイクで、その効果は抜群だった。
道行く人々の視線が集まることで、彼女の出で立ちのインパクトが証明された。
食堂に向かう途中で、沢田夢子に出会った。
「由衣、ちょうど会いに行こうと思ってたの。一緒に朝ごはん食べましょう!」沢田夢子は彼女を見るなり、親しげに腕を組んできた。
雨宮由衣のその姿を見て、沢田夢子の目が輝いた。まるで満足げな様子だった。