井上和馬は車の中で六時間以上も待ち続け、ようやく主人が夜の闇から姿を現した。
六時間以上だよ……
一体何をしていたんだろう?
井上和馬は当然ながら余計な質問はせず、素早く後部座席のドアを開けた。
車内で、井上和馬はバックミラー越しに後部座席の男を観察せずにはいられなかった。
庄司輝弥は片手の甲で額を斜めに支え、類まれな美しさの顔には冷気が漂い、黒いウィンドウに映り込んでいた。
主人の血色は以前よりずっと良くなっているのに、表情がよくない。
血色は良いのに、表情が悪い?
つまり、主人はこの六時間以上の間に一体何を経験したというのか?
ラブレター事件の後、二人とも意外と平静を保っているようだが……
ラブレターの件を思い出し、井上和馬は眉をひそめた。
しばらく躊躇した後、思わず口を開いた。「当主様、あの沢田夢子のことですが、このまま置いておくおつもりですか?」