朝食を済ませた雨宮由衣は教室へと向かった。
教室の入り口まであと十数歩のところで、雨宮由衣は窓から何人かの頭が覗き見ているのを遠くから見かけた。
彼女を見つけると、それらの頭は驚いたかのように、すっと引っ込んでしまい、教室の中からはざわめきが聞こえてきた。
そして、不気味な静けさが訪れた。
教室の入り口から三歩ほど離れた場所に立ち止まった雨宮由衣は、前に進もうとした足を突然止め、目線をさりげなくドアの上枠へと向けた。
彼女が立ち止まっている間、教室の中は静まり返っていて、まるで全員が何か大きな出来事を待ち構えているかのようだった。
昨日あんな厄介なことに当選してしまったのだから、みんなが何かしてこないはずがない。
雨宮由衣は焦ることなく、そのまま入り口で立ち止まっていた。
しばらくすると、案の定、誰かの頭が我慢できずに覗き見し、すぐに慎重に引っ込んでいった。
すぐに、授業開始のチャイムが鳴った。
背後から男性の驚いた声が聞こえた。「うわっ!びっくりした!雨宮由衣...お前か...」
三上周威は数学の教科書を抱え、胸に手を当てながら、驚いた表情で彼女の顔を見つめていた。相当驚いたようだ。「もう授業が始まるのに、なぜ入り口で立ち止まっているんだ?」
「人生について考えていました。先生、どうぞお先に。」雨宮由衣は礼儀正しく一歩下がった。
三上周威は彼女の態度に満足げな様子を見せた。「ふん、数学で0点を取って、今さら反省か?」
三上周威は話しながら、教室のドアを開けた。
次の瞬間、「ザバッ」という音とともに、大量の水が三上周威に降りかかり、彼をずぶ濡れにした。
三上周威は一瞬呆然としたあと、突然激怒した。「くっ...せっ!朝一で整えた髪型が台無しだ!どいつだ!出てこい!」
教室の中からは最初に失望のため息が漏れ、その後多くの生徒が慌てた表情を浮かべた。
しまった!なんで数学の先生が開けたんだ?終わった!
F組の全員が知っていた。担任よりもこの普段は笑顔で優しそうな数学教師を怒らせる方が危険だということを。さもなければ生きた心地がしないほどの制裁を受けることになる!
三上周威は顔の水を拭いながら冷笑した。「出てこないのか?自分で犯人を見つけ出したら、もっと酷い目に遭わせるぞ!」