第55章 安心の感覚

運転中の井上和馬は後部座席の様子が突然R指定になったのを目にして、顔が真っ赤になり、慌ててパーティションを上げた。

くそっ、制服姿の雨宮由衣と若様が一緒にいるのを見ていると、なぜか若様が犯罪を犯しているような既視感があるんだが?

雨宮由衣はまず庄司輝弥を万春堂に連れて行き、その後市内の高級ブランド街をぐるっと回った。

漢方薬と滋養強壮剤は選びやすく、店主に良質なものを選んでもらえばよかった。他の品は庄司輝弥が確認するので、間違いはないだろう。

実際、何を買うかはそれほど重要ではない。結局、物質的には大奥様は何も不自由していないのだから、礼を尽くせばそれでいい。

贈り物を選び終えると、車はゆっくりと庄司家の屋敷へと向かった。

約一時間後、雨宮由衣は記憶の中の見覚えのある邸宅を目にした。

邸宅は中国風の荘園で、古風で気品のある様式だった。車は彫刻が施された大門を通り過ぎ、さらに十数分走って本館に到着した。

本館の入り口では、きちんとした制服を着て、金縁の眼鏡をかけた老執事が待っていた。

庄司輝弥の車が到着するのを見ると、相良執事はすぐに恭しく出迎え、腰を曲げて目を伏せながら「九番目の若様!」と言った。

「ああ」庄司輝弥はいつものように無表情で短く返事をした。

相良執事は話しながら、さりげなく庄司輝弥の隣にいる少女に目を向けた。

若様は孤独で冷淡な性格で、喜怒哀楽を表に出さず、特に女性が近づくことを極端に嫌う。大奥様はありとあらゆる方法を試みたが、普通の人のように女の子と親しくさせることはできなかった。

しかし今、若様は突然ガールフレンドができ、しかも屋敷まで連れてきた。大奥様が驚いているのはもちろん、私たち使用人も信じられない思いだった。

若様の隣の少女が制服を着ているのを見て、相良執事はさらに驚いた。

若様が好きになった女の子がこんなに若いとは?しかも、か弱そうな可愛らしい感じの子で。

若葉お嬢様のような落ち着いた大人びた女性が若様の心を掴むのだと思っていたのに……

しかし、この少女は年は若く見えるものの、澄んだ眼差しと清らかな雰囲気を持ち、容姿も際立って美しく、素顔のままで化粧もしていないのにこれほどまでに。

容姿だけを見れば、確かに若様にふさわしい。ただ、人柄がどうなのかはわからない。