第71章 せめて慰めてよ

おそらく長い間抑圧されていたせいで、前世と今世の全ての負の感情がこの瞬間に爆発してしまい、雨宮由衣の涙は止まることを知らず、三十分以上経っても収まる気配がなかった。

庄司輝弥は終始一言も発せず、ただ黙って少女を抱きしめていた。

井上和馬は雨宮由衣があれほど悲しそうに泣いているのを見て、申し訳なく思った。

確かに今回は彼女を誤解してしまったのだ。考えるまでもなく、先ほど当主に相当怖い思いをさせられたに違いない。善意を誤解されたのだから、悲しくないはずがない。

幸い、事の真相は明らかになった。

しかし当主よ、彼女がこれほど泣いているのだから、せめて慰めの一言でもかけてあげたらどうだろう?

氷の彫刻のようにただそこに立っているだけでは、余計に怖がらせてしまうではないか。

まあ、当主にとっては、先ほどの言葉が精一杯だったのだろう。当主が少女を慰める姿なんて、想像もつかない。

どれほどの時が過ぎたのだろうか。ずっと硬直していた男は、ようやく抱きしめていた少女を解放した。表情は瞬く間に普段の冷たく無関心な様子に戻り、平静な声で言った。「井上、彼女を学校まで送れ」

そう言うと、振り返ることもなく立ち去った。

井上和馬はその言葉を聞いて一瞬呆然としたが、すぐに当主の去っていく後ろ姿を見つめた。なぜかその背中が寂しげに見えた。

井上和馬は軽くため息をつき、まだすすり泣いている少女の方を向いて、できるだけ優しい声で言った。「雨宮さん、もう泣かないで。安心してください。事情は分かりましたから、当主はあなたを閉じ込めたりしません。ほら、学校まで送るように言われましたよ」

雨宮由衣はすすり上げながら、小さく頷いた。

……

三十分後、雨宮由衣は学校の門前に送り届けられた。

「雨宮さん、着きました」井上和馬は車を静かに停め、回り込んで彼女のためにドアを開けた。

雨宮由衣はカバンを抱えて車を降り、呆然とした表情で、小さな顔には涙の跡がまだ残っていた。

井上和馬は目の前の少女を見つめ、何か言いかけたが、結局何も言わなかった。

黒い車が徐々に視界から消え、夜の闇に溶けていくまで、雨宮由衣の虚ろで無感情な視線はようやく焦点を取り戻し、しばらくその場に立ち尽くした後、ゆっくりと歩き出し、学校へと向かった。