第73章 一目惚れ

目の前の少女は淡いピンク色のワンピースを着て、黒髪が長く、肌は雪のように白く、特にその瞳は頭上の星よりも輝いていた。泣いたばかりのようで、潤んだ瞳には涙の残り光が宿り、より一層心を揺さぶり、愛おしく、思わず守りたくなるような…

藤原雪が美人だとすれば、目の前の少女はまさに天女が舞い降りたようで、しかも、完全に彼の好みのタイプだった!

加瀬東は自分の心臓が何かに強く打たれたような感覚を覚え、その鼓動の音が頭の中で長く響き渡り、彼の心を完全に奪っていた。

雨宮由衣はこの幽霊でも見たような表情にはもう慣れていたが、徐々に何か違和感を覚えた。

加瀬東は最初こそ幽霊でも見たかのような反応だったが、徐々に顔が赤くなり、目つきも変わっていき、最後には感電したかのように手を離した。その反応は、まるで照れや緊張しているかのようで、どもりながら彼女を見つめて言った。「お、お前が…雨宮由衣?」

雨宮由衣はその言葉を聞いて眉を少し上げ、無意識に自分の顔に触れた。そこで思い出した。彼女は実家から直接出てきたため、普通の服装で、メイクもしていなかった。

やはり、メイクをしていないと同級生を驚かせてしまうのだろう。

もう見られてしまった以上、否定もできず、ただ軽く笑って言った。「今日はメイクしてなくて、驚かせてごめんね。」

そう言うと、だるそうに背を向けて歩き去った。

雨宮由衣の後ろ姿が見えなくなっても、加瀬東はまだ夢でも見ているかのように、その場に立ち尽くしていた。

な…なんだこれは!

藤原雪よりも美しいあの女の子が…あのブス雨宮由衣だって?

そんなはずない…

加瀬東は非現実的な気持ちを抱えながら、よろよろと寮に戻った。

加瀬東を見た寮の他の三人の男子学生がすぐに近寄ってきた。

その中の一人の坊主頭が大切にしていたタバコを差し出しながら、「東兄、お帰り!」と親しげに声をかけた。

加瀬東が何の反応も示さずに自分のベッドに座り込むのを見て、坊主頭は戸惑いながら、「あの、東兄、どうしたの?大丈夫?」と尋ねた。

加瀬東の上段ベッドの男子学生も、加瀬東の魂が抜けたような様子を見て、心配そうな表情を浮かべた。「東兄、俺たちを心配させないでくれよ!」